今週の一枚 サム・スミス『イン・ザ・ロンリー・アワー』

今週の一枚 サム・スミス『イン・ザ・ロンリー・アワー』

サム・スミス
『イン・ザ・ロンリー・アワー』
1月21日発売


この22歳のイギリスの若者が2014年の音楽シーンの話題をさらった。
デビュー・アルバムである本作は2週連続でイギリス本国チャートの1位となり、
全米アルバム・チャートで初登場2位となった。
グラミー賞では全6部門でノミネートされ、批評家、アーティストたちからの絶賛を浴びた。
サム・スミスが登場したことを、アーティストたちも含めたリスナーや音楽関係者みんなが喜び、祝福している。もちろん僕もその一人だ。
ようやく日本盤が発売になって、日本でもそんな人が増えていくだろう。

本作はそのぐらい、どこからどう聴いても素晴らしいといえるデビュー・アルバムだ。

生々しい感情が溢れているにもかかわらず強い意志によって抑制されている、その歌声がまず破格に素晴らしい。
ニナ・シモンやアレサ・フランクリンが性別を超えた強さと優しさを声から放っているように、
サムの声が放つ悲しみと誇り高さも性を超えて、魂そのものとして聴き手に届く。

ゲイであるサムが書く歌詞は、深い悲しみと強い孤独感、そしてそれを乗り越えようとする意志と苦悩と葛藤に満ちている。
そうした「個」の感情が聴く者一人一人の感情を揺さぶり、老若男女を問わずあらゆる人達の心と共振する普遍性を持っている。

また、ディスクロージャーやノーティー・ボーイとのコラボレーションでも証明された最新トラックとの相性、
そして本作の基調となっているようなオーセンティックなサウンドとの相性、
ともに完璧で、これからシーンのトレンドがどう変わっていこうがサム・スミスはそうしたものに左右されない本物であることが証明されている。


アデルに続いて、このサム・スミスが20歳そこそこでイギリスから登場して世界的な存在になったということ、
それはイギリスの音楽シーンがそれまでのドメスティックな進化の流れから解放されつつあることを物語っている。
UKの音楽シーンは、ロック/ポップのイギリス独自のドメスティックな進化を遂げてきたからこそ常にクールで先鋭的なスタイルを生み出してきたが、
アデルやサム・スミスの登場は、そうした古典的な地図にはもはや位置づけられない。
国や時代による情報の差がどんどんなくなり、個がそのまま普遍性へとつながる今だからこそ生まれた、
最初からユニバーサルな存在としてのアーティストなのだ。
そういう意味でも、僕はこのアルバムを祝福したい。
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