今週の一枚 リトル・ミックス『グローリー・デイズ』

今週の一枚 リトル・ミックス『グローリー・デイズ』

リトル・ミックス
『グローリー・デイズ』
11月23日(水)発売

あの『X FACTOR』出身アーティストといえば、まず思い浮かぶのはワン・ダイレクションだが、同じ『X FACTOR』出身のアーティストとしては今では双璧をなしているといってもいいのがリトル・ミックス。さすがに1Dと比較したら引けを取るところもあるが、イギリスの女子グループとしてはスパイス・ガールズ越えを記録し、アメリカでのセールスやチャート・アクションでUK史上最強を誇っているのが彼女たちなのだ。

その魅力といえば、庶民的な意味での身の丈に合っている感、さらにさまざまな難関となる課題をクリアーするタレント・ショー優勝者であることを示す芸事へのどこまでも真面目な取り組みとなるが、その身近なイメージや魅力と完璧なパフォーマンス力を本人たちの好きなR&Bに乗せるという形で展開してきたのがこれまでのアルバムの流れとなってきていて、新作『グローリー・デイズ』はその究極の内容となっている。

順調に『DNA』、『サルート』、『ゲット・ウィアード』と音楽性とテーマ性をしっかり展開してきた彼女たちだが、今回のテーマ『グローリー・デイズ』、つまり「栄光の日々」とはついにキャリアのピークを迎えた自分たちのことかと思いきや、そうではなくて、オープナーでファースト・シングルとなっている“Shout Out to My Ex”がまさにそのメイン・テーマとなっている。つまり、さんざん泣かされてきたが実は本気で愛してもいなかったのかもしれない元彼たちを過去のものとして歩み出すことで、初めて自分の華々しい日々も開けてくるというメッセージだ。このため、今回のアルバムでは同じR&Bやダンス・ナンバーでもかなり強力でハードなエレクトロ・フレイヴァーを前面に打ち出した内容となっていて、実際問題としてメンバー平均年齢は若干24歳なのだが、荒波を越えた頼もしくて強い女子たちの心情を今回は伝えているのだ。

今回、同じように特に強いメッセージを伝える楽曲については4人のメンバーも共作していて、周囲に振り回されてはいけないというメッセージをMCとコーラスでたたみかけていくヒップホップ・ナンバー“Down and Dirty”などはあまりにも見事な作りになっているし、完全に自分主導の相手との関係をひもとく“Private Show”もまたあくまでも強い自分として現在を享受したいという情熱がほとばしるものになっている。

それにしてもすごいのは、今回のハードめなエレクトロ・ダンス・ポップでさまざまなジャンルにも手を染めていることで、たとえば、チャーリー・プースとのコラボレーション“Oops”だったら当然古典的なR&B的になるわけで、これがまたエレクトロ・モータウンみたいなものになっているし、かつての交際相手を完全却下する“F.U.”は60年代初期の甘いロックンロール・バラードのエレクトロ・ヴァージョンとなっているのが独特な毒になっていて、このかなり凝った趣向もよくできている。

ほかにもダンスホールやロックンロールをエレクトロとして展開するものもあれば、真正面からビートに取り組んでいるものもあり、当然、そこでの彼女たちのパフォーマンスは完璧なのである。4枚目にして、これだけヴァリエーションをつけて聴かせてくるというのは並大抵のものではないし、確かにこれは目下イギリスの女子グループ最高峰を見せつけてくる内容なのだ。(高見展)
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