今週の一枚 ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン『ヴェノム』
2015.08.17 07:00
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン
『ヴェノム』
8月19日(水)発売
ウェールズのヘヴィ・メタル・バンド、ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン。ヘヴィ・ロックというより、やはりヘヴィ・メタル・バンドと呼ぶにふさわしい潔さがこのバンドにはある。そのBFMV、2年ぶり5枚目となるスタジオアルバムは、原点回帰とも言えるしなやかなヘヴィネスとダークな空気に満ちた作品に仕上がった。
BFMVはデビュー当初よりヘヴィ・メタル・ファンから熱い支持を受けているバンドだが、ギターリフやリズムの重さなど、そのサウンドはメタルという枠を超えて、多様な洋楽リスナーがフェイヴァリットにあげる存在である。マシュー・タックの乾いたハイトーンヴォーカルやスクリームは、オルタナティヴ・ロックやエモコアを好んできた音楽ファンにも受け入れられる魅力を持っているし、今作ではそれが見事に全面に出て、かつ、純粋なるヘヴィ・メタル・ファンをも十分に満足させるギターソロや叙情的なメロディも健在という、バンドとしての地盤がしっかりと固まったことを証明するかのような作品となった。ファースト、そしてセカンド・アルバムを手がけたコリン・リチャードソンを三度プロデューサーとして迎えて制作されたということもあり、疾走感あふれるスラッシュ・メタルからエモーショナルなバラードまで、押し引きの匙加減が絶妙なのだ。タイトル曲“Venom”のような毒のある美しいバラードはもちろんだが、“Worthless”、“You Want A Battle?(Here's a War)”、“Hell or High Water”といったミドルテンポ曲の、引き摺るようなヘヴィ・サウンドが今作をさらに魅力的なものにしている。11月21日のOZZFESTで、これらの曲が多くのオーディエンスに熱狂をもって受け入れられる様がいまから想像できる。(杉浦美恵)