今週の一枚 ハナレグミ『What are you looking for』

今週の一枚 ハナレグミ『What are you looking for』 - 『What are you looking for』通常盤『What are you looking for』通常盤

ハナレグミ
『What are you looking for』
2015年8月19日(水)発売



多数のアーティストが作詞や作曲や共作で参加した、4年ぶりのオリジナルアルバム。全13曲のうち、永積 崇ひとりで書いているのが5曲(うち1曲はインスト)。詞も曲も人に委ねているのが2曲(YO-KING“祝福”と野田洋次郎“おあいこ”)。詞を委ねているのが2曲(大宮エリー“旅に出ると”と“逃避行 〜よなよなおっぱじめ ! ! live ver.〜”)。曲を委ねているのが2曲(堀込泰行“無印良人”と辻村豪文“ぼくはぼくでいるのが”)。詞を共作しているのが1曲(辻村豪文“ぼくはぼくでいるのが”)。曲を共作しているのが1曲(池田貴史“フリーダムライダー”)。あと、カヴァーに自分で日本語詞をつけたのが1曲。

これまでの数々のカヴァーを聴けばあきらかなように、人の曲でも歌った瞬間に自分のものにしてしまう、「歌われた方はたまったもんじゃない」レベルの強力なヴォーカリストがこの人なのであって、そういう人の特徴として、人の歌を歌いたがったり(例:矢野顕子、奥田民生)、人と一緒に作りたがったり(例:忌野清志郎)するというのは、今書いたように過去にも例があるのでそう驚くべきことではない。ただ、このアルバムを聴いてちょっと驚くのは、歌詞を「ヘヴィーさ」の順で並べると、1位:まるっきり人に詞を書いてもらった曲、2位:誰かと一緒に書いた曲、3位:永積 崇ひとりで書いた曲、になることだ。

永積 崇の曲が、ストレートなラブソングだったり童謡みたいなシンプルさを持っていたりするのに対し、YO-KINGなんて《究極 孤独 幸福》だし。野田洋次郎なんて《おあいこなんかじゃないよ/だって僕は知ってたから/おあいこだよって君が言って/笑ってくれること》だし。共作だけど、辻村豪文なんて歌いだしからいきなり《ぼくはぼくでいるのが 時々疲れるな》だし。あ、大宮エリーの2曲に限っては、そんなに重くないです。例外としてちょっと棚に上げさせてください。

つまり。過去のハナレグミの曲の中で、延々と心のベストテンに入り続けている曲は、僕の場合、ずっしりと重い曲の方が多いのだが、このアルバムにおいて、そのような、いわば「芯を食った」曲は、永積 崇がひとりで書いたのではない曲たちの方なのだ。ひとりでそういう曲を書くのがしんどかったのかもしれない。単に、そういう気分ではないのかもしれない。外部に発注したらそういう曲ばかり集まってきたので、バランスをとるために自分が書く曲はシンプルにしたのかもしれない。ただなんとなく、なのかもしれない。正確な理由はわからないが、たとえばYO-KINGの曲なんて、もうすごすぎて「こんなどえらいの書いたんなら、人にあげてないで自分で歌いなさいよ、また桜井さん頭抱えるよ」とか言いたくなるが、でも同時に「これ、真心だったら書いてないだろうな」という気もする。なんというか、「ハナレグミに書く」というミッションを受けたことによって、それぞれのクリエイターたちの中に巣食う「自分内ハナレグミ要素」が表出した、しかも「出そうとした」んじゃなくて「出てしまった」のではないかと思わせる、そんな濃さなのだ、どの曲も。で、それを歌うのが永積 崇なのだ。どうでしょう。無敵でしょう、それは。

結果、きわめてハナレグミらしい、ハナレグミにしか作れない、すばらしいアルバムになったのだった。めっちゃ聴いてます、毎日。最初に「外部アーティスト多数参加」と知った時は「全部自分で書きなさいよ、4年ぶりなんだから!」と思ったが、撤回します。(兵庫慎司)
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