今週の一枚 TOTALFAT『COME TOGETHER, SING WITH US』

今週の一枚 TOTALFAT『COME TOGETHER, SING WITH US』

TOTALFAT
『COME TOGETHER, SING WITH US』
2015年7月1日発売



インディーズへ移り放つ3年ぶりのフルアルバム。勝負の7枚目だ。
というわけで、景気よく断言してしまうが、最高傑作、です。

そもそもTOTALFATというバンドはインテリジェントなバンドだと、僕はずっと思っておりました。

メンバーと話せばよくわかるのだが、彼らはとてもスマートで、頭がいい。
Shunのあの熱さの塊のようなMCもじっくり聞いていると、すごく丁寧に、言いたいことをきちんと整理して伝えるスピーチになっていることがわかる。
4人と話していると、もちろん熱さ全開のモードにもなるが、一方で知的な会話を積み上げていく楽しさを貪っている自分を感じる。
ライヴでの佇まいも、僕の目には、地に足のついた大人の男4人、というイメージで映る。

確かにTOTALFATのフィジカルは強い。
それはみんなよく知っている。
では、彼らがなぜあそこまでフィジカルを磨いてきたか、磨こうと思ったのか。
そこにTOTALFATと、そしてこの最高傑作『COME TOGETHER, SING WITH US』を紐解く鍵がある。

僕が思うに、TOTALFATは知っていたのだと思う。
この誰にも負けないフィジカルの強さこそが、どんな綺麗な言葉よりも、パワーを持つことになるであろうことを。
2015年というのはそういう時代になるということを。
そして、このハイパーなパワーこそ、キッズの欲望を受け止めるための何よりもシンプルにして、最強のメソッドであることを。

TOTALFATはそのことを熟知していたのだと思う。
まっすぐな姿勢そのものとしてのロックが必要とされる季節がくることを彼らはそれこそ、バンドを結成した15年前から直感として知っていた。
そして、いつもキッズとのダイレクトな結びつきだけを目指し、ライヴの快楽への最短距離を突き抜けてきたTOTALFATの「思想」は、「何がロックなのか」なんて議論を超えて、はるかに説得力があり、インテリジェントだった。

ただ。
その音楽的なインテリジェンスを完璧なかたちで作品化させたことはまだなかった。
しかし、彼らの思想を込めた完璧な一枚がついに生まれた。
それがこのアルバムだ。
本作『COME TOGETHER, SING WITH US』はついに生まれた、「身」「心」ともに最強のTOTALFATが詰め込まれた作品である。
メロコアはもちろん、いわゆるパーティチューン、レゲエ、ヒップホップ、EDM、熱いバラード、昨今のムーブメントをいじる四つ打ちのダンスビート。なんでもありだ。
どの曲もあらゆる可能性を試された上で提示されていて、深い思慮を感じさせる。
彼らが刻んできた年輪が生んだ素晴らしいアルバムである。

Joseはインタヴューでこんなことを言っていた。

「僕はですね、もし全く無名のバンドがこのアルバム作ってきたら、めちゃくちゃ売れると思う(笑)」
「TOTALFATは変わった、生まれ変わった瞬間になった気がするんすよ。自分の中で、新人感がすげえあって(笑)。この年になってこんなワクワクできんのって、ヤベえなあ、やっぱアーティストやってて良かったなって」

そのとおりだろう。
でも、僕は、このアルバムをもってTOTALFATが「生まれ変わった」のではなくて、このアルバムをもってTOTALFATが初めて「ちゃんとTOTALFATになった」、ということなんじゃないかと思っている。

この作品だけはまっすぐに届いてほしい。(小栁大輔)
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