今週の一枚 white white sisters

今週の一枚 white white sisters

white white sisters
『SOMETHING WONDROUS』



先鋭的で、曲のバリエーションも豊か、完成度も高く、ポップでもある。
ホワイト・ホワイト・シスターズ、結成6年目にして初のフル・アルバム。
傑作と言っていい見事なアルバムだ。

2014年現在のあらゆるダンス・ミュージックのエッセンスを
1枚のポップ・アルバムとしてここまで完成させたディスクは日本では他にはない。
エレクトロ、チルウェイヴ、シンセポップ、テクノ/ロック、ハウス、R&B、ダブステップ、ブロステップなど、
00年代以降にシーンを塗り替えいまだ進化のまっただ中にあるダンス・ミュージックのエッジとエッセンスが
このアルバムの中で更に独自の進化を遂げている。

WWSといえば最初はシューゲイザー・バンドのイメージや
ブンブンサテライツのフォロワーというイメージがあったが、
そこからリリースごとにアメーバのようにイメージを広げ、
この初のフルアルバムでついにその全貌を見せた。
と同時に、バンド自身も新たな領域に踏み込んでいることを
ここではっきりと見せつけている。
日本の次世代のダンス・ポップは俺達に任せろ、と言わんばかりの充実度だ。

特筆すべきはヴォーカルのアプローチだ。
エレクトロニックなダンスミュージックの場合、歌のうまいシンガーをフィーチャリングするか、
ヴォーカルをサウンド・デザインに寄せる方向に加工して全体に整合感を持たせることが多い。
だが、彼らはヴォーカルの個性、存在感、生々しさ−−−−—
つまり「その曲の語り手」としてヴォーカルを浮き立たせている。

だからこのアルバムは「最新エレクトロニック・ポップ/ダンス・ポップの優秀作」ではなく、「新時代の表現者によるポップ・アルバム」として聴くことができる。
まるでロック・アルバムのように、共感したりせつなさを感じたりしながら思い切り自分に寄せて聴くことができる。

貴重な存在だと思う。
山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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