今週の一枚 エレファントカシマシ『RAINBOW』

今週の一枚 エレファントカシマシ『RAINBOW』 - 『RAINBOW』通常盤 11月18日『RAINBOW』通常盤 11月18日

エレファントカシマシ
『RAINBOW』
2015年11月18日(水)発売



エレファントカシマシは、これまで幾度もの転機を経ながら、その度に作品に表れる変化が驚きとともにリスナーに受け入れられ、27年もの長きに渡って多くの音楽ファンに愛され続けてきた。通算22枚目のアルバムとなるこの『RAINBOW』も、エレカシの変化、それもとびきりポジティヴでダイナミックな変化を感じさせる作品である。先行シングルの“愛すべき今日”を聴いたときからその予感はあったが、3年半をかけて完成したこのアルバムは、これまで何度も言われてきた「転機」とは変化のスケールが違うのだ。宮本の言葉が深い部分にまで届く、素晴らしい作品に仕上がった。

オープニングのインスト曲から間髪入れずに始まる2曲目“RAINBOW”の疾走感あふれるビートにヤラレて、つい見逃しそうになるけれど、《ありがとう 幸せだったよ/ああ もう 朝日が》という歌詞は、過去への明確な決別でありながら、それを生きてきた自分を否定せず、新しい日々を歩いていく強い意志を感じさせるもの。それは“愛すべき今日”の《どんなときも歩くのさ おお ベイビー 雨の日も風の日も》という歌詞にもつながる。そして、ノスタルジーを呼び起こすようなストリングスと、荒々しいディストーションギターが共存する“なからん”は、まばゆい過去への憧憬と、もう戻れぬのなら前へ行くという両極の思いが静かに歌われる名曲。

さらに9曲目“永遠の旅人”で歌われる《いづれにせよ 俺は ゆかなきゃあならぬ!!》という言葉。とてもキャッチーなこの曲は、12曲目に“Under The Sky”というタイトルで、打ち込みアレンジによりリプライズされる。“永遠の旅人”とは、もちろん自身のことだろう(たぶん、聴き手である私たちへの呼びかけでもある)。どこに向かっているのかわからなくてもいい、ただそこには空があり、今日も太陽が昇る。意味を考えすぎれば足が止まるから、《とりあえず足の向くまま》歩いていくという、いま宮本がたどりついた答えが、とんでもない説得力で私たちに響く。

ラストの“雨の日も風の日も”に至るまで、ここまで言葉が力強く聞こえるアルバムはこれまでなかったと思う。といって、悟りとか不惑とか、つまらない高みに上ってしまったわけではもちろんなく、むしろ悩みや惑いは増していながらも、それを受け入れた力強さが全編にあふれているのだ。聴き終えて、しばし言葉をかみしめてまた1曲目から再生、というループがこの2日ほど続いている。(杉浦美恵)
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