今週の一枚 KANA-BOON 『ランアンドラン』

今週の一枚 KANA-BOON 『ランアンドラン』

KANA-BOON
『ランアンドラン』
2016年1月20日(水)発売


KANA-BOONのメジャー2ndアルバム『TIME』が何より感動的だったのは、激動の2014年の苦悩と葛藤を経て夢の大舞台=日本武道館&大阪城ホールへと至る自身の境遇を、“結晶星”“フルドライブ”“生きてゆく”“シルエット”といったシングル曲も含め12の楽曲を通してひとつのストーリーに編み上げてみせたことだ。「夢を叶えること」の痛みも喜びも、ありったけのポップな訴求力を満載したロックンロールとして響かせながら、彼らはシーン最前線へ一気に駆け上がっていったのである。

そして、2月リリースの次作アルバム『Origin』を完成させたKANA-BOONが、そのリードシングルとして世に放つ『ランアンドラン』。そのタイトル曲“ランアンドラン”で谷口鮪が掲げるのは、「あなたが自分の夢と向き合うのに『遅すぎる』ことは決してない」というメッセージだ。《これから僕を待つ未来がどんなものだとしても/君を過去に置き去りにはしない》というフレーズにおける「君」は、夢を抱いて別の道を進む彼自身の大切な人だけでなく、KANA-BOONのロックに自らの夢を託して聴いているリスナー自身を想起させる。

振り返れば谷口は、シナリオアートとのスプリット盤『talking/ナナヒツジ』の初回盤A&通常盤に収録されているカップリング曲“ぬけがら”でも、《走って引き返そう/今なら間に合うから》と「人生の中で置き去りにしてきた夢」を歌にしているし、『talking/ナナヒツジ』特設サイトに掲載されたシナリオアート・ハヤシコウスケとの対談の中でも、「夢への分岐点を、もう一回作ってみてもいいんじゃないかと思って」と“ぬけがら”について語っている。

《僕らもほんと、夢を持ってやっていくことが活動の根源ですけど、夢を持っていても、普通の人はやっぱり生活があったり、自分の人生の中で夢とは違う道を行くこともすごく多いし。っていうか世の中ではそういう人がほとんどのはずやから。それでも、心のどこかにシコリがあって……そういう人にグッと深く聴いてもらえればいいなと思って。「戻ってもいいんじゃないか?」っていう。夢への分岐点を、もう一回作ってみてもいいんじゃないかなと思って。そういう曲になればと思って作りましたね》
(『talking/ナナヒツジ』特設サイトより http://www.kanaboon.com/ssss/interview.html

ロックシーンを牽引するだけの輝度とスケール感を獲得したKANA-BOONの「今」のエネルギーを、バンドの夢を支え実現させてくれたリスナーにどこまで強く還元できるか――そんな想いが今の谷口の、ひいてはKANA-BOONの大きな原動力になっていることは間違いない。“ランアンドラン”で《君を過去に置き去りにはしない》と歌われる「君」は、願望をひとつひとつ現実にしてきたKANA-BOON自身にとっての、もっと大きく根源的な「その先」の夢そのものでもあるのだろう。

《中身が無い、鬣が無い奴に蔑まれる謂れは無い》と一転して挑戦的に歌い上げるカップリング曲“I don't care”とのコントラストも実に痛快な今作。“なんでもねだり”“ダイバー”“talking”“ランアンドラン”といったシングル曲群が、アルバム『Origin』でどのようなストーリーを描き出すのか?――という期待感を沸き立たせるには十分すぎる1枚だ。(高橋智樹)

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