今週の一枚 WHITE ASH 『Quest』

今週の一枚 WHITE ASH 『Quest』

WHITE ASH
『Quest』
2016年8月17日(水)発売

これはすごい。WHITE ASHという音楽は、常に不穏でミステリアスなエッジ感と、多彩なテクスチャーを融通無碍に取り込みつつロックの異次元から歌とサウンドを発信しているような正体不明な感覚を備えていた。が、その「正体」を、メンバー自身の手によって完膚なきまでに証明しきった作品が、ミニアルバムとしては3作目となるこの『Quest』だ。

すでにアナウンスされている通り、今作にはスマホゲームアプリ『モンスターストライク』発のYouTubeアニメ(2015年10月〜/日本語版含む11言語対応で配信)のエンディングテーマとして制作された“Strike”など5曲、さらに9月に開催される『モンスト』No.1チーム決定戦「モンストグランプリ2016チャンピオンシップ」イメージソング“Monster”の計6曲を収録。まさに『モンスト』との全力タッグによって生まれた1枚だ。

『モンスト』アニメのスタッフサイドから熱烈なラブコールを受けて今回のプロジェクトに臨んだというWHITE ASH。
『ROCKIN'ON JAPAN』9月号(現在発売中)のインタビューでも「一番大事なのは『モンスト』のファンの人、観てる人にかっこいい曲だなって思ってもらえるのが重要だった」とのび太は語っていたし、“Strike”“Knock On Doors In You”の2曲には『モンスト』のメインテーマとも言えるメロディがフィーチャーされているなど、バンドのファンのみならず『モンスト』ファンへの訴求力を念頭に置いていたことが窺える。

それはすなわち、WHITE ASHの謎めいたロックの謎解きを、「他者」に対してバンド自らプレゼンする、というプロセスでもあった。
そして――そのことによって今作は結果的に、WHITE ASHの高純度結晶的な作品になっているのである。

そこにはもちろん、今年3月にリリースした4thフルアルバム『SPADE 3』とその後の全国ツアーでの極限進化によって、「どれだけ自分たちの武器をネタバレしようとも、その魅力と真価はビクともしない」という確信を勝ち得たことが、今作の「出し惜しみなし大放出」ぶりにつながった――というバックグラウンドが存在するであろうことは想像に難くない。

音楽に限らず、表現の真の強度は「自分がそれをどれだけ強く訴えたいか」よりも、その想いを「相手にどういう形で受け取ってほしいか」という視点にいかに明快に置換できるか、によって決まることが多い。
のび太自身は『Quest』の楽曲について「すごく不思議な立ち位置。本筋ではあるんだけど、本筋じゃないとも言えるし、みたいな(笑)」(前述『JAPAN』インタビューより)と語っていたが、WHITE ASH自身がWHITE ASHを因数分解した今作は、彼らの「これから」にとっても重要な1枚になっていくと思う。(高橋智樹)
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