今週の一枚 クリープハイプ『破花』

今週の一枚 クリープハイプ『破花』

クリープハイプ
『破花』
2016年3月23日(水)



年明けから行われていたツアー「わすれもの~つま先はその先へ~2016」と、その延長戦ツアー「たぶんちょうど、そんな感じ」において披露されていた、クリープハイプのニューシングル曲“破花”。ライヴで触れたときにも力強く視界を切り開くようなナンバーだと思ったが、あらためて歌詞を読みながらふれると真にエモーショナルで感動的なナンバーだ。ちなみにこの曲は、代々木ゼミナールのCMソングであり、シングルのスペシャルサイト上では、“破花”の歌詞公開に先駆けて歌詞の穴埋め問題が出題されたりもしていた。


鉛筆を握って深く自問自答を繰り返す歌の主人公。《どうして どうして どうして どうして どうして/疑う事で何か始まる/どうして どうして どうして どうして/信じる者は足を掬われる》。自力で道を切り開かなければならない者は、めったやたらに「信じる」という行為が心の慰めにはならないことを知っている。しゃにむに白紙を塗りつぶして解答に辿り着くしかない。そんな学生が抱える息苦しさを、鮮やかすぎるほどに描写している1曲だ。

でも一方で、僕はこの歌を、尾崎世界観の表現者としての苦しみが率直に表れたナンバーとして聴いている。いつでも巧みな言葉遊びやダブルミーニング、押韻を駆使しまくり、言葉を音楽的に響かせようとする尾崎の作家性の裏側が、これまでにないほどクリアに見えてくる。代ゼミのタイアップ曲だから、ということを口実に、彼の直面する現実を描いたのではないか、と勘ぐってしまうほどだ。そうでなければ、体のいい応援歌を超えた“破花”の強靭なメッセージは生まれ得なかっただろう。

先のビデオの後半には、『破花』初回限定盤につくドキュメンタリーフィルムのダイジェストも収められている。替えのきかない喉の調子に苦しみ続ける尾崎。現在発売中の『ROCKIN’ ON JAPAN』4月号では、1月の赤坂BLITZ公演前に喉の不調が深刻だったこと、しかしライヴ直前に調子を取り戻したこと(実際のライヴは、まるで不調などと思わせないパフォーマンスだった)が、インタヴュー記事の中で語られている。そんな苦しみも、学業の苦しみと形は違えど“破花”のメッセージ性を裏づけているのだ。

「赤裸々」とは、丸裸な様子と同時に、虚飾や嘘偽りのない様子を伝える言葉だ。“破花”は、尾崎が赤裸々なロック道を突き詰めた先で、感動とエネルギーを呼び起こす名曲である。シングルには“answer”と“サウジアラビア”というカップリング曲も収録されているが、「問い」と「答え」を巡るラブソング“answer”も素晴らしい。(小池宏和)
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