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    今週の一枚 SEKAI NO OWARI『Dragon Night』

    今週の一枚 SEKAI NO OWARI『Dragon Night』

    SEKAI NO OWARI
    『Dragon Night』
    10月15日発売



    台風のせいでSEKAI NO OWARIの富士急ハイランド?でのイベント「TOKYO FANTASY」の3日目が中止になって、
    僕は観ることができなかった。
    とても、とても悔しい。
    こう言うと身も蓋もなくなるけど、52歳のおっさんで、この仕事を25年以上やってて、毎日のようにライブを観る生活を続けているわけだから、
    たとえ楽しみにしているライブが仕事の都合とかで行けなくなっても
    「まあいっか」
    で済んでしまうものである。
    でも、「TOKYO FANTASY」は、しばらく悔しかった。
    今でも「初日か2日目にしとけばよかった!」と悔やまれる。
    部下の徳山や小川が観れたことが妬ましい。
    給料下げてやろうかと密かに思うほどである。

    僕にとって、SEKAI NO OWARIのライブを観に行くことは、ほかのアーティストのライブを観に行くことと少し意味が違う。
    ロックやポップのライブとしてどれほどのものを観せてくれるだろうか、という通常の期待感ではなくて、
    今までになかったどんな新しいエンタテインメントを提案してくるのだろうか、という期待感なのである。
    ライブとして楽しみ、だけではなくて、
    ライブのあり方の新しい提案が楽しみ。

    音楽エンタテインメントの新しいあり方を模索しているアーティストはもちろんたくさんいる。
    でも20代のバンドでこれだけのスケール感でそれを実践しながらティーンエイジャーからの絶大な支持を得ているバンドはセカオワしかいない。


    今回のニューシングル「Dragon Night」は、そんなセカオワの「新しい提案」が明確に「音」として提示された画期的なシングルだ。
    そのキーワードはEDM。
    Electronic Dance Music(=EDM)はその名の通り、打ち込み、シンセサイザー主体のダンスミュージックで、世界的に猛威をふるっている新しいジャンルだ。
    音楽自体はこれまでにもあったスタイルなので特に「先鋭的」というものでもない。
    だが、これほど徹底したエンタテインメント指向のダンスミュージックが台頭したのは80年代のディスコ・サウンド以来30年以上ぶりのことだ。
    とにかくカラフルで、派手で、開放的で、楽しくて、ファンタジック。
    ディズニーランドのように、あるいはハリウッド映画のように、あらゆる人に解放されていて、あらゆる人を楽しませる、超ポップなダンス・ミュージックなのだ。

    このシングルでセカオワはそのEDMのトップ・プロデューサー/DJのニッキー・ロメロとタッグを組んで、
    セカオワ独自の哲学とファンタジーをこれまで以上にカラフルに、エレクトリックに、ヴォルテージ高く描いている。
    そして、この曲がライブで視覚的な演出とともに演奏されることを想像すれば、
    おそらくまったく新しいセカオワ流のダンス・ミュージック空間が生まれるはずである。
    いや、もうすでに富士急ハイランド?で生まれたはずだ(悔しい)。

    2曲目はHAWAIIAN6のカヴァー。
    HAWAIIAN6の曲をオーケストラル・アレンジにして、オリジナルのパンク・ロックとはまた違う味で、しかも歌詞をまったく変えて、せつなさを伝えてくる。
    3曲目は「Love the warz」のリ・アレンジ・バージョン。
    日々アップデートされていくSEKAI NO OWARIの最新の「今」のクオリティー感にフィットする、
    ハイグレードなサウンドになっている。

    SEKAI NO OWARIがやっていることは、
    「新世代バンド」といったくくりではとらえられない。
    新しい時代の新しい世代にとっての新しい音楽のあり方、音楽エンタテインメントのあり方を、
    シーンに頼らず、仲間とつるまず、独自に作りあげようとしている。

    その姿勢が「EDM」というキーワードとともに明確に伝わるシングルだ。
    山崎洋一郎の「総編集長日記」の最新記事
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