今週の一枚 YUKI 『まばたき』

今週の一枚 YUKI 『まばたき』 - 『まばたき』通常盤『まばたき』通常盤

《あがいてたら 振り出しに戻ってた》……2002年のソロデビューから15年、8thアルバム『まばたき』の1曲目“暴れたがっている”の冒頭のフレーズが、今作のYUKIのモードを何より明快に象徴している。

《負けてたまるか 世界のその先が見てみたいんだ》(“暴れたがっている”)

《新しい何かが 新しくなくなる/欲しいのは物じゃない ときめいていたい 遊びの天才》(“私は誰だ”)

タイトに統制の効いたダンスポップアルバムだった前作『FLY』から一転、ラフなバンドサウンドの躍動感と競い合うようなエモーショナルな歌を聴かせている今作『まばたき』。
その音楽も存在も含め、音楽シーン屈指のポップアートとしての存在感を放ってきたYUKIだが、今作に吹き荒れる情熱&衝動炸裂感は今までのどのYUKI作品よりもスリリングだし、そこから立ち昇る制御不能なポップ感は驚くほど眩しい生命力にあふれている。

オフィシャルHP内の『まばたき』特設サイト(http://www.yukiweb.net/mabataki/)に掲載されたインタビューでも、「とにかく言いたいことが溢れ出てきて、暴れたがっている自分を止めることができませんでした」「まるで思春期が蘇ってきたかのような感覚」と語っている通り、今作を貫いているのは紛れもない、YUKI自身の中に沸き立っている「青春性」そのものだ。

己の未熟さに抗い、少しでも前へ先へと進むために葛藤し苦悩する――誰もが思春期に向き合いながら、成長するに従って次第にその存在を忘れていくその「青春性」という感覚に今、YUKIは真っ向から対峙している。
それはすなわち、自分自身とソロでの15年史を未完成と位置付け、なおも自分のポップを突き詰めようとする「永遠の探求者」としての華麗なるファイティングポーズにほかならない。

《さよならバイスタンダー 僕らは歩いて行く/この道行きの最後が 天国か そこらじゃあないとしても/ただの君と笑って立っていたいよ/誇らしさとか 願いとか 希望とか/もっと ずっと 持ち合わせとくよ》(“さよならバイスタンダー”)

今の彼女が立っている《振り出し》の場所とはまさに、さらなる高みを目指して闘い続ける「終わりなき思春期」のモードそのものなのだろう。(高橋智樹)
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