今週の一枚 クリープハイプ

今週の一枚 クリープハイプ

クリープハイプ
『エロ/二十九、三十』



勢いよく上昇気流に乗ったグライダーがやがて気持ちいい水平飛行になって、
そこからさらにもう一つ上の気流に乗ってスーッと上がっていく
―――そんな風にクリープハイプが状況的にも音楽的にも
さらに高みへと向かっているのがよーくわかるシングル。

詞も曲もアレンジも演奏も歌も、ほんとに上手い。
無理も背伸びも迷いも空回りもなくて、職人の手際いい技によって生まれてくる逸品のようにスッと心に入ってくる曲ばかりだ。
“エロ”と“二十九、三十”がダブルA面になっているが、“東京日和”も名曲で、もうトリプルA面シングルでもいいんじゃないかと思う。


歌が歌であることを主張し続けるクリープハイプは貴重な存在だと僕は思う。
ファンタジーの代用品でもなく、元気を出すための燃料でもなく、
同世代と盛り上がるためのコミュニケーション・ツールでもなく、
歌は歌であることによって歌として成立しなければならない、という強い意志を
僕はクリープハイプにいつも感じる。

だから、クリープハイプの歌を聴いた後はいつもなんとも言えない気持ちになる。
「悲しい」でも「楽しい」でもない、なんとも言えない気持ちになる。
それは、「なんとも言えない気持ち」を歌うために歌はあるからだ。
クリープハイプの歌はそこから1歩も逃げない。

クリープハイプの歌詞の中で繰り広げられる虚無的で身も蓋もない投げやりなドラマは、
歌が歌以外の何かにすり替えられてしまうのを避けるための巧妙な脚本なのだ。

今回のシングル曲も、見事なまでに「歌」が「歌」としてある。
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