今週の一枚 sumika『ファンファーレ / 春夏秋冬』

今週の一枚 sumika『ファンファーレ / 春夏秋冬』 - 『ファンファーレ / 春夏秋冬』『ファンファーレ / 春夏秋冬』
前作『Fiction e.p』からわずか4ヶ月、sumikaが早くも新作シングルをリリース。今作は、劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』のオープニング曲&主題歌として、sumikaが書き下ろした楽曲2曲を収録したものだ。映画やドラマのタイアップ曲として制作される楽曲は、どのアーティストの場合でも、いつもなら選ばないであろうテーマだったり、サウンドが実験的であったり、逆にものすごくキャッチーだったり、何かしら通常の作品とは違った趣が生まれて、興味深い作品となることが多いのだが、今回のsumikaの場合も例に漏れず、アニメ作品の物語性に寄り添いつつ、とてもまっすぐなメッセージが心に響く、珠玉のポップソングが完成した。

sumikaの持ち味でもあるアグレッシブなアレンジや、思わず「え? そうくる?」と声に出てしまいそうな、良い意味で予想を裏切る曲展開などは、今回は抑えめで、その分、メロディの良さをじっくり堪能できる楽曲になったと思う。オープニング曲である“ファンファーレ”は、何かが始まる時の疾走感と強い思いがストレートに伝わるギター&ピアノロックサウンド、そして切なさと強さが溢れる歌声と小気味良いコーラスワーク──。言ってみればsumikaのストロングポイントが純粋に立ち現れた楽曲だ。楽曲に捻りを加えたり、ひとつのパートが前面に出るような極端なメリハリはあえてつけず、シンプルに彼らのアンサンブルが楽しめる楽曲で、原点回帰的かと思いきや、そのアンサンブルの洗練には、まさしく現在進行形のsumikaを感じ取ることができる。


主題歌となる“春夏秋冬”は、一聴してそのメロディのやさしさと切なさに耳を奪われるスローバラード。ドラマチックだけれどシンプルで、アコースティックギターの響きとsumikaのバンドサウンドがキラキラと輝いているような美しい楽曲だ。特筆すべきはそのメロディ。いつにも増して歌のメロディが物語性を帯びていて、その歌詞の内容とともに、エモーショナルに胸を打つ。実はこの楽曲、作詞は片岡健太(Vo・G)だが、作曲のクレジットは「sumika」となっている。先日、このシングル作品についてのインタビューで、その理由についても訊いてみたのだが、はじめは、いつものように片岡がデモを作って曲を作ろうと思っていたという。しかし「これじゃないんじゃないか」という思いが何度やり直しても拭えず、メンバー全員でスタジオに入って、まっさらな状態からメロディやサウンドを模索することから始めたのだと、制作時のことを振り返った。

詳しくは、『ROCKIN’ON JAPAN』10月号(8月30日発売)のインタビューを読んでもらいたいが、実は今回は、この“春夏秋冬”だけでなく“ファンファーレ”も、楽曲制作の方法がいつものsumikaとはまったく違うというのだ。“ファンファーレ”は、まず荒井智之(Dr・Cho)と片岡がふたりでスタジオに入り、かなりラフなデモを作って、「ここでどかーん!と」とか「ここはしなやかに」とか、あえて音符やコードでの指示ではなく抽象的な言葉のイメージで、メンバーとともにサウンドアレンジを詰めていったのだとか。これは、片岡がオリジナル曲を作り始めた高校生の頃のやり方だという。それを聞いて、そうか、だから“ファンファーレ”はとてもピュアに響くし、でも現在のsumikaだからこそのアンサンブルの成熟もあって、デビュー当初とも、ここ最近のモードとも一味違った響きを持つのだと合点がいった。なぜ今回、彼らがこうした制作方法をとったのかについては、ぜひインタビューを読んでみてほしい。この2曲がことさら感動的に響く理由が、きっとわかってもらえると思う。

そして、このシングルには収録されていないが、もう1曲、この劇場アニメのための劇中歌“秘密(movie ver.)”も、sumikaは制作している(※こちらの楽曲は、シングルと同時発売のオリジナルサウンドトラックに収録される)。“秘密”は小川貴之(Key・Cho)の作曲で制作が進んでいき、これ以上はないというほどに、アニメーションで表現されるシーンに寄り添う楽曲を作り上げていった。こちらも、通常のタイアップ曲ではまず考えられないような、監督はじめ、アニメ制作チームとの深いリレーションの中で作り上げていった楽曲だったようで、sumikaというバンドが、いかに現状に甘んじることなく常に新たな扉を自ら開けに行っているかがよくわかる。

sumikaの楽曲が劇場アニメの主題歌として鳴っていること、それ自体には、もはや誰も驚かないだろう。それくらい、sumikaは様々な場面で「求められる」アーティストになった。その機会を得たsumikaが、その経験を通じてどれほど豊かな財産を手にしたか、その答えをぜひこのシングル作品を聴いて感じ取ってほしい。(杉浦美恵)
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