今週の一枚 [Alexandros] 『SNOW SOUND / 今まで君が泣いた分取り戻そう』

今週の一枚 [Alexandros] 『SNOW SOUND / 今まで君が泣いた分取り戻そう』

片や、「JR東日本 2016-2017 JR SKISKI」CMでも大量オンエア中の、透明感とセンチメントあふれるミドルナンバー“SNOW SOUND”。そして、映画『きょうのキラ君』主題歌として最新アルバム『EXIST!』から収録された“今まで君が泣いた分取り戻そう”。
このふたつのタイアップ曲をパッケージした両A面シングルは確かに、丹念に磨き抜かれたメロディアス・サイド・オブ・[Alexandros]の真骨頂的な作品ではある。しかしそれ以上に、今作に収められた“SNOW SOUND”“今まで君が泣いた分取り戻そう”は、[Alexandros]が/川上洋平がロックという表現に抱く夢と理想そのものを体現する2曲でもある。

その音に触れる者すべての魂をロックの彼方へぶっ飛ばすハイエナジーなダイナミズム——だけではなく、リスナー/オーディエンスすべてを抱き締めるに十分なタフな包容力も含めて[Alexandros]のロックの核心であることは、ファンならずとも誰もが感じていることと思う。
そして今作は、“Adventure”をはじめとした楽曲を通してこれまでにも具現化されてきたその「聴き手を/時代を真っ向から受け止める雄大なスケール感」が、ふたつの異なる究極形として改めて提示したシングルであると言える。

《例えるならそれは白い音/まだまだ誰にも何にも染まってない音/いがみ合い、許し合いが折り重なり/色鮮やかなまでのメロディーになっていく》
(“SNOW SOUND”)

“SNOW SOUND”のハイブリッドな音色を擁したアレンジの隅々にまでみなぎる、怒濤のエモーションと無限のイマジネーション。オアシス直系のストレートなロックバラード“今まで君が泣いた分取り戻そう”に託した、「今」を生きる僕らの不屈の共闘精神——。
それらの楽曲はあたかも、僕らの視界と世界観をどこまで壮大な次元へ導くことができるか?という命題こそがロックの、己の使命であるという宣誓であるかのように、途方もない広がりをもって身体と心に響いてくる。

ちなみに、前述の“Adventure”を含むシングル『Adventure / Droshky!』(2014年)のリリース時に川上洋平に取材した際、彼はその直前の初日本武道館公演について「もちろん武道館は歴史あるところだし、すごいことだと思うんですけど、たぶん街を歩いてる人に『武道館に行ったことある?』って訊いたら、10人に1人とか2人くらいじゃないですかね?」と至って冷静に振り返っていたのが強く印象に残っている。当時まだインディーズだったバンドにしてみれば十分すぎる快挙と言える武道館ワンマンを終えても、彼の中のロマンは「まだまだ」と言っていたのであろう、ということが窺える。

その後、2万3千人を擁した自身最大規模の幕張メッセワンマンを成功させ、6万人規模のROCK IN JAPAN FESTIVAL・GRASS STAGEに立ち続ける今もなお、彼の情熱は「まだまだ」と[Alexandros]自身を前へ先へと突き動かし、さらなる悠久の地平へ駆り立てているに違いない——そんなバンドの現在地が、見果てぬサウンドスケープとメロディが織り成す今作のロックの景色からもリアルに伝わってくるはずだ。(高橋智樹)
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