今週の一枚 SEKAI NO OWARI『Tree』
2015.01.14 07:00
SEKAI NO OWARI
『Tree』
2015年1月14日発売
なにしろ5曲のシングル曲「RPG」、「Death Disco」、「スノーマジックファンタジー」、「炎と森のカーニバル」、「Dragon Night」、
そして番組「めざましテレビ木曜日」のテーマソング「PLAY」と映画「海月姫」の主題歌「マーメイドラプソディー」と、
7曲もの単発曲が入っているからポップな爆発感は十分。
そして、前作から2年7ヶ月の内にバージョンアップして広がった音楽性/サウンドのお陰でクオリティー感も飛躍的アップ。
アルバム前半はまさにディズニー的なファンタジーが次々と展開し、中盤では孤独でダークなストーリーに転じて、終盤はそれらをまとめ上げるかのようなSEKAI NO OWARIならではのハッピーエンドで終わるという、
アルバムとしてのストーリー性もうまく紡がれている。
期待を裏切らない、期待を上回る、堂々のアルバム。
やはり彼らは次元の違うものを目指しているということを証明するアルバムだ。
でも、聴いている間ずっとドキドキするのだ。いや、ハラハラするのだ。
なぜだろう。
フェスの現場などで彼らと仕事で接するとよくわかるのだが、
彼らは本当にあらゆることをすべて自分達で判断して自分達でやっている。
今どきライブハウスのパンクバンドでももう少しスタッフに任せるだろうと思うようなことも、自分達ですべて判断している。
音楽だけでなく、ビジュアルや雑誌の撮影まですべて自分たちでアイデアを出したり、プランニングしたりしている。
それが当たり前なのだろう。
club EARTHを作ってそこで寝泊まりしながら活動するところから始まった彼らにとっては、
わざわざ「DIY精神」なんて掲げるまでもなく、自分たちの思想を自分たちの手で形にすることが表現活動なのだということは当然のことなのだろう。
だから彼らのやることは、それがいくら「ファンタジー」であり「ポップ」であっても常に「生々しい」。
リアルな感触がある。
彼らの考えていることがフィルターを通さずにダイレクトに伝わってくるのだ。
その生々しさにドキドキ、ハラハラするのだ。
横浜の遊園地のアトラクション内にある非常口を入るところ(“炎と森のカーニバル”)からファンタジーの世界が始まり、アルバムの中盤(“銀河街の悪夢”)でとつぜん鬱の告白が始まる。そして踏切の音。
小学生、中学生のファンも多いセカオワなのに、いや、そうだからこそ彼らは責任をもって自分達の本当の哲学をフィルターを通さずに自分たちの手で届けようとしている。
それがもっとも緊張感をもって伝わってくる瞬間だ。
自分達の頭の中にあるものをそのままありのままに表現することがもっともファンタジーで、もっともエンタテインメントで、もっともメッセージなのだということを彼らは知っている。
そしてそれを徹底的に貫こうとしている。