今週の一枚 V.A『JUST LIKE HONEY ~「ハチミツ」20th Anniversary Tribute~』

今週の一枚 V.A『JUST LIKE HONEY ~「ハチミツ」20th Anniversary Tribute~』

V.A
『JUST LIKE HONEY ~「ハチミツ」20th Anniversary Tribute~』
2015年12月23日(水)発売



1995年に発売された、スピッツの6枚目にして、初のオリコンチャート首位を獲得したアルバム『ハチミツ』。その『ハチミツ』発売から20年、いまも多くの人の心に深く刻み込まれるこの名盤のトリビュート『JUST LIKE HONEY ~「ハチミツ」20th Anniversary Tribute~』と同じ曲順、さらに、シングル『ロビンソン』のカップリング曲であった“俺のすべて”も加えた全12曲を12組のアーティストがカヴァーしている。

『ハチミツ』には、“ロビンソン”“涙がキラリ☆”という、ある意味スピッツというバンドの評価を世間に広く定着させたシングル曲が収録されているだけでなく、収録された全11曲、すべてが輝きに満ちた、まさに奇跡のようなアルバムだった。多くの人が思い入れを持つこれらの楽曲に、今回の参加アーティストがどんな新しい息吹を、深い愛を吹き込んでくれるのだろうと、否が応にも期待は膨らむ。しかし、実際に参加をオファーされたアーティストは、とても光栄なことと感じながらも、実はかなりの重責を感じたのではないかと想像する。すでに自身の記憶にも焼き付いている素晴らしい名曲ばかりである。多かれ少なかれ、年代問わず、『ハチミツ』に、スピッツに影響を受けたミュージシャンたちからすれば、宝物に直接手を触れるような、そんな怖さもあったはず。だから、国民的なヒット曲と言っても過言ではない“ロビンソン”で参加することとなった、9mm Parabellum Bulletのチャレンジングなカヴァーには拍手を送りたい。原曲のゆったりとした切ないイメージを疾走感溢れるビートで塗り替えた。そう、9mmがやるなら、ここまで振り切れないと意味がない。

逆に、10-FEETによる“涙がキラリ☆”は、もともとのテンポを活かしながら、厚いギターサウンドと丁寧なヴォーカルで、原曲へのリスペクトを隠さない。そして、個人的に予想以上にナイスカヴァー!と驚いたのが鬼龍院 翔(ゴールデンボンバー)による“ルナルナ”だ。さわやかなグルーヴに満ちた、ファンの間でも人気の高いこの曲。今作発売に先駆けてのコメントでは本人も「僕の暗く暑苦しい歌声は草野マサムネさんとは似ても似つかず、レコーディングを始めた時はこんな歌声で良いんだろうか…と焦りました」と、その戸惑いを素直に語っていた。もちろん原曲とは違う質感の“ルナルナ”になっているが、これが非常に良い。彼のシンガーとしてのポテンシャルを改めて感じる。

そして、スピッツからの影響が、そのまま血肉となっているようなindigo la Endによる“愛のことば”は、完全に自分たちの楽曲として高い完成度で成立させているし、初恋の嵐 feat. 曽我部恵一による“君と暮らせたら”では、原曲の持つピュアな青さを、マサムネとは違った甘くやわらかな声の魅力で増幅させている。どのカヴァーも楽曲の素晴らしさを再認識させるだけでなく、スピッツというバンドから、そして草野正宗というソングライターから、どのような影響を受けてきたのかを感じ取ることができる内容の濃いトリビュート盤だ。そしてまた、CD棚から『ハチミツ』を手に取り聴きたくなってしまうのである。(杉浦美恵)
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