今週の一枚 Aimer『Black Bird / Tiny Dancers / 思い出は奇麗で』

今週の一枚 Aimer『Black Bird / Tiny Dancers / 思い出は奇麗で』 - 『Black Bird / Tiny Dancers / 思い出は奇麗で』通常盤『Black Bird / Tiny Dancers / 思い出は奇麗で』通常盤
Aimerの最新シングルはトリプルタイトルで、まず“Black Bird”は本日9月7日より劇場公開されている映画『累-かさね-』(監督:佐藤祐市 出演:土屋太鳳、芳根京子ほか)の主題歌。人気コミックの実写化ということもあって大きな話題となっている作品だ。“Black Bird”は、溢れ出すノイジーなギターサウンドとストリングスが、内面に渦巻く激しい感情を伴った「願望」のうねりを描き出している。


《愛されるような 誰かになりたかっただけ》

人がそれぞれに抱えた変身願望を、普遍的な行動原理・動機として描き切ったこのラインが凄い。作詞家としてのAimer(aimerrhythm名義)は、映画のストーリーを踏まえながらも、自身の歌声を重ね合わせるように《すぐに堕ちていきそうだ/まるで一人のステージ/まっ暗闇で声を枯らすよ I cry》と歌詞を綴っている。かつて歌いすぎて、声が出なくなるほどに喉を痛めてしまったという経験を持つAimerに、『累-かさね-』のストーリーに横たわる変身願望という主題はどんなふうに目に映っただろう。

変身願望は、人が成長する礎に成りうるし、豊かな創造性を発揮させる土壌にもなるだろう。一方で、変身願望の限界を見たとき、人はそこで初めて揺るぎない自我と出会うことになる。限界を無理に越えようとすれば、そこには何らかの歪みや痛みが生じることになるだろう。飛内将大作曲による“Black Bird”という歌は、そんな誰にでも持ちうる変身願望の限界で、のたうち回るような苦悩とともに鳴り響いている。これは映画主題歌でありながら、Aimerというシンガーの存在そのものを伝える歌だ。


さて、ライブ映像をMVに用いた“Tiny Dancers”は、陽性のアップリフティングなエネルギーを感じさせる楽曲で、“ONE”以降の新しいAimerの創作姿勢が立ち上っている。リスナーと真っ直ぐに向き合うメッセージを宿したこの曲は、今夏ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018出演時にも披露されたが、くるくると華麗に楽しげに舞い歌うAimerは、目の前の多くのリスナーがいてこその姿だと感じられた。作曲を担当した高橋奎は、今年ソニーミュージック主催の「全国作曲コンクール」で入選し、Aimer作品への採用が決定していた。


表題曲3曲のうちもっとも早く、6月の父の日に合わせてMVが公開された“思い出は奇麗で”は、温かくフォーキーな曲調にノスタルジーが弾むナンバー。連作となっているアニメMVからも伺えるように、父への思いが綴られた1曲だ。2013年のシングル『RE:I AM EP』収録曲がセルフカバーされた“今日から思い出 Evergreen ver.”も収められているが、“思い出は奇麗で”では“今日から思い出”と歌詞を呼応させ自らアンサーするように《さようなら/ありがとう/愛されてたんだ》と歌っている点が涙を誘う。多くの人に見守られ、成長し続ける歌姫の表現レンジを、多角的に伝える素晴らしいシングルだ。(小池宏和)
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