Aimer Hall Tour 18/19 “soleil et pluie”」のとき、Aimerはステージ上で「強い自分と弱い自分は、太陽と雨。ありのままの自分を、観てもらおうとしました」と語っていた。そのテーマを2作のアルバムに込めて届けられることになる、4月10日(水)リリースの『Sun Dance』と『Penny Rain』。過去にはSawanoHiroyuki[nZk]:Aimer(サワノヒロユキヌジークエメ)名義による『UnChild』とソロ名義の『Midnight Sun』、また『BEST SELECTION “noir”』、『BEST SELECTION “blanc”』といったアルバムの同時リリースがあったけれども、とりわけ新作2作はAimerの内面における成長・変化をありありと映し出した作品と言えるだろう。
プロローグ的なインスト“soleil”から始まる『Sun Dance』は、作曲・アレンジに飛内将大や玉井健二、百田留衣らagehasprings勢を迎え、作詞は全曲aimerrhythm名義。メジャーデビュー時期から続くタッグでガッチリと作り上げられた陽性ポップ作だ。“ONE”から“We Two”、“3min”という力強いステップのように序盤でリスナーに呼びかけ(ワン、ツー、スリーというタイトルの並びになっているのがおもしろい)、AbemaTV『白雪とオオカミくんには騙されない❤』主題歌として人気を博している切々とした美曲“コイワズライ”も収録。明るくパワフルな曲調が多いけれど、拭いきれない寂しさと共に温かな思いを運ぶシングル曲“思い出は奇麗で”をこの「太陽」サイドに込めた点がまた印象深い。
一方、インスト曲“pluie”に導かれる『Penny Rain』は、序盤から梶浦由記が手がけた“I beg you”、そして“Black Bird”という、激情の歌声を後押しする重厚な曲調とアレンジのシングル曲が畳み掛けるさまが強烈。Coccoが作詞・作曲した“眩いばかり”や、TKが提供した“Stand By You”、澤野弘之による“i-mage <in/AR>”などもこちらのアルバムに収録されている。人の内面にある二面性を描いたからといって、それぞれの表現が薄まるわけではない。むしろ、Aimerが描く激情の雨は、これまでにも増して猛々しく渦巻き、降りしきっている。
多くのリスナーと向き合う過程で、恐らくAimerは、自身の言葉と歌声の使い方を変えていく必要に迫られてきたのではないか。2017年夏、日本武道館のベスト盤ライブで、初めて“ONE”に触れたときの驚きと歓喜が忘れられない。その言葉と歌声を、Aimerは人々を励まし、鼓舞するために使い始めていた。その後の一連のシングル群を経て、新しいAimerが結実したのが『Sun Dance』と『Penny Rain』という2作のアルバムだ。
最も重要な点は、心の振動を唯一無二の歌声に変えるAimerという強い個性を持ったシンガー/ミュージシャンが、従来の彼女自身のイメージを越えていくほどの表現に挑んだ、という点である。僕は『Sun Dance』に収録された“We Two”の、《Melody first 意味なんてないよね》という、一見何気ないようなラインに心惹かれる。ただ陽気だとか重厚だとかいった単純な話ではなく、音楽は意味さえ振り切って、ひとりの人間から無限の可能性を引き出すものだ。それに誠実であろうとしたシンガー/ミュージシャンとしてのAimerに、僕は拍手を贈りたい。(小池宏和)
「【今週の一枚】Aimerが『Sun Dance』と『Penny Rain』の2枚で伝えたこの世界に溢れるものたち
2019.04.09 12:50