今週の一枚 [Alexandros]『Swan』

今週の一枚 [Alexandros]『Swan』 - 通常盤通常盤

[Alexandros]
『Swan』
発売中

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016出演時に、ニューアルバムのタイトル『EXIST!』と発売日(2016年11月9日)を発表した[Alexandros]。それに先行して届けられたのが、この最新シングル『Swan』だ。リリースと同時に、フルのミュージックビデオも公開された。

“Swan”のミュージックビデオはこちら。

今作でも斬新なロックサウンドの在り方を提示しつつ、それ以上に美しさが際立つ表題曲“Swan”だが、じっくり歌詞と向き合ってみると、実に奥深いテーマが横たわっていて驚かされる。これは哀しい愛とセックスの記憶である。歌い出しのコーラスにはオートチューンが噛まされ、すでにリアルタイムな肉声としての輪郭を失った場面から、この歌の物語は始まっている。

《途端に赤色のセリフが飛び散って/深い傷が夜補って/音もなく、音もなく、/踊り明かした》

《愛を踊るそぶり魅せつけながら/あからさまに嘯き/溢れんばかりの歌声で/また喘ぐの?》

一時の快楽や慰め以上の意味を持たない夜を越えて、すれ違いの寂しさや虚しさ、悩ましさ狂おしさはさらに募り、身を焦がすばかりだ。表向きはロマンチックで優美な時間に思えたとしても、水面の下には必死に足掻くような思いが立ち込めている。

ここであらためて、哀しい愛の物語を音楽に置き換えてみる。ロックファンなら、懸命に求めても音楽が思いを満たしてくれない夜を体験したことがあるのではないか。一曲の音楽は必ず鳴り止んでしまうし、一夜のライブには必ず終わりが来る。

アーティストはいつでも渾身の思いで音楽を投げかけるけれど、それがあなたの心の空隙にぴったりと収まるとは限らない。音楽は、決してリスナーの思い通りにはならないからこそ、ときに驚くべき喜びをもたらしてくれるのだ。それは、我々が躍起になって求める愛の形と、とても良く似ている。

“Swan”という曲の凄さは、ロックスターとロックファンの関係を、どこまでも官能的に、かつエモーショナルに描いている点にある。一夜のロマンスを越えた向こう側でこそ、あなたと音楽の関係はあなただけの特別な意味を生み、育て始めるのだ。一時の快楽や慰めだけでは済まされないものが確かにある。あなたは、気が狂いそうなほど愛する音楽に、一体何を思い、何を見出すだろうか。そんな話をしよう。(小池宏和)
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする