今週の一枚 RADWIMPS『ピクニック』

今週の一枚 RADWIMPS『ピクニック』

RADWIMPS
『ピクニック』
2015年6月10日発売



RADWIMPS、1年8ヶ月ぶりのシングルはヴォーカル&ギター野田洋次郎が主演を務める映画『トイレのピエタ』の主題歌だ。
野田はこの“ピクニック”を、クランクアップ直後に書き上げたという。その経緯について、「自分が演じた主人公・宏が全然抜けずに、けじめをつける意味でもこの曲を作った」と『ロッキング・オン・ジャパン』のインタヴューで語っている。

爪弾かれるアコースティックギターの音色と、昂ぶる心を抑えるかのように歌う野田洋次郎の静謐な歌声。シンプル極まりない、弾き語りの延長線のような、RADWIMPSの曲の中でずば抜けて静かな美しさを持つ“ピクニック”。

余命3ヶ月と告げられた主人公・宏。突然おとずれた人生最期の夏に、女子高生・真衣と出会う。自分たちが今生きているこの「世界」を、決して居心地の良い場所だとは感じていないふたり。そのはみだした欠落同士が、青く燃えるように強く惹かれあう。

不器用でピュアなふたつの魂の共鳴。
野田洋次郎が、なぜ『トイレのピエタ』に、本人の言葉を借りるならば「思想的に奇跡的にシンクロした」のか。
どう生きていて、どう死に向かっていくのか。世界との距離感。一瞬の刹那――。
とてつもなく丁寧に繊細に、そのすべてが詰まっている。
言葉に言い表すことが困難な、曖昧で細やかな感情・空気を、ここまで見事に、的確にシンプルに情緒的に、音と言葉で描かれているところに野田洋次郎のすごさがある。

そして、《それならいっそ僕ら》というフレーズがリフレインするエンディング。
自らの感情を解析するように細かく切り刻んで徹底的に証明していく多くのRADWIMPSの楽曲と違い、聴き手にすべてを預けるように、果てしない余韻がループする。
この曲が聴けて本当に良かった。(小松香里)
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