今週の一枚 星野源『Family Song』

今週の一枚 星野源『Family Song』
目下、ライブツアー「Continues」の最中である星野源が、『恋』以来約10ヶ月ぶりにリリースするシングル。表題曲はTVドラマ『過保護のカホコ』主題歌に起用されている。日常をつぶさに捉える筆致の歌詞と、緩やかに抑揚するメロディをソウルフルに歌い上げるミドルテンポのナンバーであり、フィリーソウル風の豊穣なストリングスアレンジに彩られた曲調だ。

前作シングル曲の“恋”は『逃げるは恥だが役に立つ』という新しい恋愛観・結婚観を提案するドラマにがっちりと寄り添う作風になっていたが、多様な家族観が交錯する『過保護のカホコ』においても、“Family Song”というズバリの楽曲を提供している。星野源の凄さはこの点にあって、本来「普通」の基準など存在しないはずの家族の概念を飛び越え、ポップを描いてみせる。まちまちな価値観を抱えてはいても、人は誰だって平穏無事な毎日を願っているはずだということ。ポップとは「All(全体)」ではなく「Every(各々)」なのだということ。差異を声高に叫ぶだけでは答えが見つからないとき、どうにか共通点を探る手続きが必要になる。星野源のポップソングとはそういうものだ。

今春、NHKの音楽特番『おげんさんといっしょ』で、星野源は昭和の主婦像をステレオタイプ化したようなキャラクター=おげんさんを演じ、その夫役(お父さん)を高畑充希(奇しくも後の『カホコ』ヒロインだ)が演じていた。コントではよくある手法だが、昔ながらの日本のありふれたお茶の間に倒錯が滑り込んでいたわけだ。そんなときにも、日常とは当たり前に目の前にあるものではなく、自ら願い、作り上げるべきものなのだという思いが感じられていた。

《出会いに意味などないけれど/血の色 形も違うけれど/いつまでも側にいることが/できたらいいだろうな》。星野源のそんな願いは、民族や人種の差異どころか、地球外生命体との差異だって超えてしまいそうだ。“Family Song”の曲調が、星野源史上に例を見ないほど普遍的な響きを持つソウルミュージックとなっているのも、決して本物っぽいソウルだからとかヴィンテージな作風だから良いということではない。まさに普遍的な、平穏無事な毎日を願う思いの結晶として、この曲調や音像が選ばれていることが素晴らしいのである。

さてカップリング曲だが、花王「ビオレu ボディウォッシュ」のCM曲となった“肌”は、こちらもストリングスを配したサウンドでありながらリズムやキーボードの響きはラテンテイストになっている。さながらサルソウル・オーケストラを想起させるブリージンなダンスポップで、この季節にぴったりなロマンチックな歌詞が歌われる。興味がある人はフィリーソウルと初期サルソウルの関連性を探ってみると、“Family Song”との繋がりをより深く楽しめるかもしれない。

そして、初期プリンスを意識したという鋭いビート感のアップテンポな曲調にニヤリとさせられる、全編がファルセットで歌われた“プリン”。タイトなコンビネーションがブレイクする箇所の、ボソボソとしたやりとりがユーモラスだ。また例によって、ハウスミュージックではなく宅録という意味で名づけられた“KIDS (House ver)”も収録。今回はさらに捻りを効かせて、ハウスミュージックやヒップホップの歴史を紡いできたリズムマシン=TR-808のレトロなビートを用いた楽曲となっている。ポップミュージック史から得た多種多様な影響を1枚のシングルに詰め込み、違和感なしに気持ち良く聴かせてしまう手捌きもまるで魔法のようだ。(小池宏和)
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