今週の一枚 SHISHAMO『SHISHAMO 2』
2015.03.02 21:34
SHISHAMO
『SHISHAMO 2』
2015年3月4日発売
音楽を聴いて、「自由」を感じるのはどんなときですか?
「私は自由なのよ」と歌った歌を聴いたときでしょうか?
いや、きっとそれは、自由な気分で書かれた音楽を聴いたときなんじゃないかと思います。
では、音楽を聴いて、「あなたが恋しい」という気持ちを共有できるのはどんなときでしょうか?
「あなたが恋しい恋しい、恋しくて死んじゃう」と叫んだ歌を聴いたときでしょうか?
それもきっと、「あなたが恋しい」という気分で書かれた音楽を聴いたときなんじゃないでしょうか。
つまり、メッセージとはきっと「言葉」そのものなのではなくて、作り手の気分とマインド――より文学的に言うなら、その曲、そのメロディ、あるいはその歌詞を生まざるを得なかった必然性によって担保されるものなのだと思います。
必然性。「そうでなければならない」ことの強さ、のことです。
その強さをもって才能だと言うならば、僕はSHISHAMO、とりわけ宮崎朝子というミュージシャンはものすごい才能を持っていると思います。
メロディの自由さ、声自体が歌っている恋しさとやるせなさ、声とメロディに刻まれた「思い」を完璧に100%の精度で代弁する歌詞。
すべてが「こうでなければならない」「私が歌うのはこの歌とこのメロディとこの言葉でなければならない」という必然に貫かれた音楽であると思います。
だから、彼女が自由を感じていればその歌は自由を感じさせる曲になります。
季節が感じさせる切なさや、恋にまつわるたくさんの感情についても同様です。
その意味において、今回発売される『SHISHAMO 2』はどこまでも饒舌な、本当に多くの感情を伝えてくれる、素晴らしいポップミュージック集なのです。
このアルバムを聴いていると、まるで湧水がこんこんと、時にどわーっと溢れ出る光景が浮かんできます。
いや、もちろん曲を作るには大変な思いをしているはずですが、彼女の歌はそんな苦労を感じさせない。
そして、その、何かに導かれたような曲の「生まれ方」がメロディや言葉自体の「意味」を超越して気持ちいい。すごい。
SHISHAMOのラブソングは一発で「わかる!」という猛烈な共感を呼び起こします。
それは苦労や完成までの過程や物語という「意味」を超えて、曲を聴いた瞬間に「それでしかない感情」だけが伝わってくるから。
実際には裏腹な、とても複雑な感情を歌っているとしても、それでもその複雑さが一発で伝わる。
この一筆書きのポップソングはその意味において完璧なアートなのです。
また、最後にちゃんと書いておきたいのは、『SHISHAMO 2』はとても「ライヴ」なアルバムであるということです。
目の前に人がいるアルバムであり、そして、「その人」をとても信用しているアルバムでもあると思います。
3人のアレンジと演奏が大胆に自由に躍動しているし、どんどん動員を伸ばしていくライヴ活動を経て着実に自信をつけた素晴らしいバンドの、素晴らしいアレンジがのびのびと鳴っています。
その「気分」は瑞々しく躍動していて、ひらめきが爆発していることがよくわかります。
無敵的な魅力を感じて、このアルバムを聴いていると、目の前に広がる日常がぱっと輝度を上げるような思いに、何度も駆られます。それは何よりマジカルな瞬間、です。
『SHISHAMO 2』はだから、ひと言で言うなら最高のロックアルバムなのです。
(小栁大輔)