今週の一枚 BABYMETAL『LIVE AT TOKYO DOME』

今週の一枚 BABYMETAL『LIVE AT TOKYO DOME』

2016年4月にリリースされたセカンドアルバム『METAL RESISTANCE』によって、BABYMETALのメタルレジスタンス第4章は幕を開けた。ロンドン・ウェンブリーアリーナの12,000人(日本各地ではライブビューイングも)に始まった大規模なワールドツアーは北米と欧州各地を駆け抜け、同年夏にはフジロック、ROCK IN JAPAN、サマーソニック、ライジングサンという国内の大規模フェスを立て続けに制覇。そして辿り着いたファイナルが、今回の映像作品に収められている東京ドーム2デイズ(2日間計11万人の動員)である。

何もかもが破格で、その規模感の話だけが一人歩きしてしまいそうにもなるのだけれど、つまりそれは「世界中の、あらゆる世代のあらゆる感性と趣味嗜好の持ち主に、一度同じ方を向かせる」という途方もない目標設定のすごさに尽きるのだと思う。メタルでそれをやる、ということの面白さも付加価値のひとつとしてもちろんあるが、何しろ音楽ジャンルの細分化が進み切った今日、そんな大それたことをプロジェクトとして思いつくこと自体がとんでもないし、その実践の真ん中にはあの3人の存在が必要不可欠だったのだ。

(LIVE AT TOKYO DOME Trailer)

2日間で曲かぶりなし、MCもアンコールもなし。しかしそれは予定調和としてパッケージされた内容ではなく、完璧な熱狂を目指してデザインされた様式と構築の美であることが分かる。9月19日の「RED NIGHT」はのっけから“Road of Resistance”の勇壮なチャントを巻き起こして始まり、徹頭徹尾タイトにして大スケールで鳴らされるエクストリームなメタルサウンドには、華々しい照明演出がシンクロしてゆく。この日は神々しいステージ演出の“Amore -蒼星-”など『METAL RESISTANCE』収録曲を多く楽しめるのだが、やはり終盤の“ギミチョコ!!”→“KARATE”→ライブ初披露の“Tales of The Destinies”という連打がヤバい。

一方、9月20日の「BLACK NIGHT」は、3人が磔になった登場シーンに始まる。巨大な火柱が立ち上る“Sis. Anger”や“NO RAIN, NO RAINBOW”の壮麗な響きも素晴らしいけれど、過去曲が数多く並んでおり、パフォーマンスの中に3人の成長物語を見つけながら21世紀型の和製メタルクラシックを再確認するといった趣向だ。「あらゆる人々が同じ方を向く」「3人の少女が成長する」という2つのテーマが交差するステージのクライマックス“イジメ、ダメ、ゼッタイ”には感動しきりである。

凛とした表情でエモーションを乗せながら伸びやかな美声を放ち続けるSU-METALも、真剣そのものの表情でアクロバティックな楽曲群を能動的にガンガン乗りこなしてゆくYUIMETALも、そしてはちきれんばかりのスマイルで観る者を惹きつけて止まないMOAMETALも。三者三様に成長と構築ぶりを伝えていて美しい。これまでにBABYMETALを観たことがない人も、一度本作に向き合ってみてほしい。そこには必ず、あなたの心の奥底に触れる何かがあるはずだ。(小池宏和)
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