今週の一枚 MONOEYES 『A Mirage In The Sun』

今週の一枚 MONOEYES 『A Mirage In The Sun』

MONOEYES
『A Mirage In The Sun』
7月29日 (水) 発売



すでに『My Instant Song E.P.』の音に触れている人はリアルに感じていると思うが、MONOEYESが鳴らす音楽には、聴いた瞬間にその人の中にあるロック像のデフォルト設定を塗り替えてしまうだけの存在感がある。細美武士がthe HIATUSの「その先」にイメージする音世界の深度と純度をキープするために、別のアウトプットを必要としたところからMONOEYESが生まれた――という成り立ちは彼自身も『ROCKIN'ON JAPAN』誌のインタヴューでも語っている通りだが、改めて今回完成したアルバムを聴くと、the HIATUSとの位置関係や比較論とはまったく別の次元で、細美武士、戸高賢史、スコット・マーフィー、一瀬正和の4人が真っ直ぐにロックを奏でていることがはっきり伝わってくる。

ストレートな楽曲を、ストレートに演奏すれば、ストレートな音楽として聴き手に届く――わけではない。むしろ、ストレートな音楽であればあるほど、歌や演奏のアラは目立つし、表現する側の揺らぎや迷いがモロにその音に反映されやすい。ストレートな楽曲と演奏にダイレクトな訴求力を重ね合わせることができるのは、ブレや歪みのない意志と楽曲、十分に磨き上げ鍛え上げられた歌と演奏があればこそのことだ。ところが、細美が戸高/スコット/一瀬に呼びかける形でMONOEYESがバンドとして活動をスタートしてからわずか半年ほどで、4人は紅蓮の流線型の如き強靭なアンサンブルを確立、ヴォーカル/ギター/ベース/ドラムが一丸となって「面」や「線」ではなく一点突破のソリッドなダイナミズムを描き出している。これがどれだけ奇跡的なことか、おわかりいただけるだろうか。

そして――今作で何より感動的なのは、アルバム全編にわたって途方もないヴァイタリティに満ちている楽曲と、それを自らのリミッターをOFFにして歌い上げる細美の絶唱が、この瞬間を渾身の力で疾駆しようとする、どこか使命感にも似た切迫した想いに満ちていることだ。幕開けを飾る“Cold Reaction”のタフなリフとビート。“Like We’ve Never Lost”でエモーショナルにせめぎ合うWギターの音像。“End Of The Story”の晴れやかなメロディを歓喜の彼方へと導く2ビートの爆走感。自身の衝動を揺るぎないロックとして撃ち放つために、細美は3人の騎士を必要として、3人は持てる能力のすべてをもって細美に応えた。だからこの音が生まれた……そんなMONOEYESの必然を、今作の全12曲から誰もが読み取ることができるはずだ。

 救済のためだけじゃない
 欺瞞の帝国
 一歩を踏み出せ
 俺は新しい世界なんていらない
 (“Cold Reaction”訳詞)

「シーンの趨勢への目配り」「サウンド・テクスチャーとしての目新しさ」を遠く置き去りにしたところで、「今」を生きるひとりの表現者として、己の魂に忠実にロックの核心を解き放ったからこそ轟かせることができた、最高の音楽がここにある。真に時代を刷新していくロックとは、おそらくこういうものだ。(高橋智樹)
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