今週の一枚 BUMP OF CHICKEN『Butterflies』

今週の一枚 BUMP OF CHICKEN『Butterflies』

BUMP OF CHICKEN
『Butterflies』
2016年2月10日(水)発売



 煌びやかで華やかなシンセが踊るリードトラック“Butterfly”で歌われているのは、生きていく上で必ずつきまとう、何かを失い、何かを忘れていく感覚――。それはいくら蓋をしようとも、自分だけがわかっている事実であって、その感覚・思いを自己の意志でもってどうしていくのか。つまり、「生きるとはどういうことか」という、BUMP OF CHICKENがずっと歌ってきたこと、ただそのことである。

 ここ数年、バンプは曲が求めているより広い世界に踏み出すために――それは「鶏が先か、卵か先か」という議論に近いものでもあると思うのだが、より自分たちの世界をかけがえのないものにするためのサウンドアレンジを求め、勇気を持って様々なことを行なってきた。初音ミクとのコラボレーション、スタジアムでのライヴ、地上波生出演、東京ドームライヴ――。それらの出来事によって巻き起こったたくさんの聴き手からのリアクションは、最初は4人だけの王国のようなものであったBUMP OF CHICKENが背負っている看板が、誇りを持ってしかるべきものだという自負を明確にするものであっただろう。バンドはさらなる勇気と誇りを持って、BUMP OF CHICKENを育んでいった。その健全で自然で、でもとてつもなく誠実な思いに基づいて作られたのが、このニューアルバム『Butterflies』だ。

 発売中の『ロッキング・オン・ジャパン』3月号の表紙巻頭インタヴューで、その制作過程のひとつひとつが4人の口から詳しく語られているが、今作は「今までで一番、4人が話し合いながら、音も一番合わせながら作られたアルバム」だという。冒頭に書いた“Butterfly”もそうだが、1曲目に据えられた“GO”のエレクトリックなサウンドしかり、たくさんの音楽的トライアルがなされている。でも、BUMP OF CHICKENが歌うことは変わらない。心と心の触れ合い、絶対的な孤独と温もり、不屈の強い意志――より深く濃くなったそれらを、不器用に足元を確かめながら、11個の宝石にしていった。音数の少ないシンプルなサウンドで、優しく密やかな、孤独な温もりそのものが音楽になったような“流星群”が特に素晴らしい。この地球における人と人との繋がり、その普遍の核が詰まっている。この曲は、アルバムの中で藤原基央が一番最後に書き上げた曲だそうだ。20年もの間4人の絆を深くしてきたBUMP OF CHICKENの、このメモリアルなタイミングに相応しい空気をまとっている。

 ラスト11曲目には“ファイター”が収められている。
《空っぽの鞄は空っぽで/愛しい重さを増やしていく/重くなる度怖くなった/潰さないように抱きしめた》
 日々を重ねるごとに増える「愛しい重さ」を抱きしめるため、よりタフになったBUMP OF CHICKEN。『Butterflies』発売日の翌日には、地元・千葉県にある幕張メッセにて『結成20周年記念Special Live「20」』を開催する。4月からは初のスタジアムツアー“BFLY”だ。バンプの旅は続く。(小松香里)
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