今週の一枚 10-FEET『Fin』

今週の一枚 10-FEET『Fin』


TAKUMA(Vo・G)の振り絞るような咆哮からはじまる、10-FEETの8thアルバム『Fin』。このオープニングに象徴されるように、彼らの作品史上最も「彼らのまるごとが出し尽くされている」印象が強い。それは、バラエティに富んでいるとか、ギリギリ感がある速い楽曲が多いとか、そういう単純な意味じゃない。前作から約5年という長い待ち時間、結成20周年という節目、『Fin』というタイトル、インタビューでTAKUMAが語っている「これで最後だと思って取り組むことが大事だと思った」という言葉……これらの情報からも推測してもらえるように、今作には「重さ」がある。15曲52分というボリュームも、ある種「聴きやすさ」を「計算」してはいないことの証だろう。

とはいえ、今作は決して聴きにくいものではない。むしろ、彼らが今まで(誰よりもキッズ想いであるがゆえに)念頭に置いていた「10-FEETらしさ」を取っ払ったことによって、新たなポップセンスが解き放たれている。シングルでも見られた「フォーキーなテイストを含んだ日本語ロック」のエッセンスも、そのひとつだ。また、東京スカパラダイスオーケストラをフィーチャリングし、ユーモアをジェントルに鳴らした“HONE SKA”も、「10-FEETらしさ」を取っ払ったからこそ、生まれ得た楽曲だと思う。フォーキーなテイストもユーモアも、これまでの10-FEETを構成してきた重要な要素だが、今作ではそれらを表現する上で「10-FEETらしさ」というフィルターを通さずに、やりたいことを躊躇せずに出し切ったように感じられるのだ。その奔放さが影響しているからか、今作は「重さ」が「楽しく」聴ける。

じゃあ10-FEETらしくないアルバムなのか? そういう疑問が浮かぶかもしれない。でも、そんなことはない! これはあくまで私の説だけれど、彼ら自身が「10-FEETらしさ」と思っていた枠からはみ出たところにも「10-FEETらしさ」はあって、それらが彼らの今作へ取り組む姿勢をきっかけに集められ、20年目にして日の目を見たのではないか?「ようやく、ここまでさらけ出してくれたんだね!」と嬉しくなってしまうほど、彼ららしいアルバムだと思う。

KOUICHI(Dr・Cho)のツービートにのったTAKUMAとNAOKI(B・Vo)の追いかけボーカルがたまらない“Fin”、終盤の急展開に驚かされるショートチューン“fast edge emotion”、子どもに歌いたくなる「大切なこと」が刻まれた“ウミガラスとアザラシ”、ゴリッゴリで血沸き肉躍るけど歌われているのは《eto!》という“十二支”、速くなるサビで涙腺にスイッチが入る“夢の泥舟”、すとんと心に落ちてくるシンプルな説得力を誇る“way out way out”、ひたすら野球のことだけが歌われている男臭いナンバー“STANDin”――そして《枯れ落ちた 同じ所に/また何度も 咲きました》とエモーショナルにアッパーに歌う“何度も咲きました”でアルバムは幕を閉じる。

この一節を聴いた時に、《人はいつか死に そしてまた生まれる》という“CHERRY BLOSSOM”(2002年リリースの1stアルバム『springman』収録)のフレーズを思い出した。現実を描きながらも「終わりははじまり」であるという希望を、彼らはずっと鳴らし続けてきてくれた。そう考えると、「最後だと思って取り組んだ」今作からも、何かがはじまるのかもしれない。聴いた私たちも、彼ら自身も、ここから新しい一歩を踏み出すための1枚だ。(高橋美穂)

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