今週の一枚 9mm Parabellum Bullet『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』

今週の一枚 9mm Parabellum Bullet『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』

この「クアトロA-Sideシングル」の4曲をライヴで初披露したのは、6月に大阪・Zepp Nambaで行われた「カオスの百年 vol.11」だったが(ライヴレポートはこちら→ http://ro69.jp/live/detail/126501)、正真正銘・誰もが初めて聴くはずの楽曲が、あっという間にフロアを熱狂へ導いていた場面が、今でも強烈に印象に残っている。楽曲に凝縮されたアイデアやエモーションはもちろんのこと、何よりそれをロックアクトとして炸裂させる卓越したプレイヤビリティと演奏の爆発力にこそ彼らの核心がある――という9mmの在り方が、オーディエンスとの間で確かに共有されていることを証明する、決定的瞬間のように思えたからだ。

“Living Dying Message”“ハートに火をつけて”にも通じる、ロシア民謡かゲーム音楽のような独特のフレージングを、ラテン系のビートとともにロックの業火へと叩き込む、滝 善充作曲の“反逆のマーチ”。これまでにも“Grasshopper”“Caution!!”などの楽曲越しに、ソリッドな8ビートロックへのロマンをあふれさせてきた、中村和彦作曲による“ダークホース”。ギターのトラックを重ねず、限りなくライヴに近い質感の音像の中で、ひときわ雄大なスケール感に満ちた歌とメロディが広がる、菅原卓郎作曲“誰も知らない”。そして、ツーバスのシャッフルビートとミステリアスな世界観がスリリングにせめぎ合う、かみじょうちひろ作詞作曲の“Mad Pierrot”……と書き出してみると、この4曲が同じバンドの楽曲として成立していることに改めて驚かされる。

そして、4人の作曲&プロデュースによるこれらの楽曲は取りも直さず、それらすべてを「ロックど真ん中」として鳴らす4人のキャパシティの広さとタフネスを物語るものでもある。メタル/ハードコア/パンク/ロックンロール/ラテン/歌謡など幅広い要素を「飛び道具として外部から取り入れている」のではなく、それらがすでにロックバンド=9mmの表現として血肉化されたものであることが、今作からはリアルに伝わるはずだ。

多彩なサウンドテクスチャーを自在に体現している(ように見える)9mmの音楽は、ジャンルの足枷を取り払った「なんでもあり」な表現として意訳され、バンドに限らず多くの次世代アーティストに少なからぬ影響を与えてもいる。が、その「なんでもあり」なカオスを、最終的に「ロックど真ん中」のダイナミズムと肉体性を持った表現として響かせているケースはほぼ皆無だ。そんな9mmの稀有な存在感を、このシングルはより一層くっきりと浮き彫りにしている。(高橋智樹)
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