今週の一枚 UVERworld『UVERworld LIVE at KYOCERA DOME OSAKA』

今週の一枚 UVERworld『UVERworld LIVE at KYOCERA DOME OSAKA』

UVERworld
『UVERworld LIVE at KYOCERA DOME OSAKA』
2015年4月15日発売



昨年7月5日に行われた京セラドーム大阪公演を収めた映像作品。

あらためて観直してあらためて思う。
本当に最高のライヴだ。
熱く、優しく、しかし厳しく、鋭く。
そして、何より巨大で大胆で、なのにひとつひとつの瞬間に繊細なメッセージが行き渡っている。
この「大きく」て、「細かな」ライヴが京セラ規模でやれるからUVERworldは現在最強のバンドのひとつなのだ。
そう胸を張って言える。
それくらい、このライヴはすごい。

UVERworldを聴いているとたまにこんなことを思う。
「これはどこからどう聴いてもTAKUYA∞の歌だ。だけど、どう聴いても自分のことを歌っている歌なんじゃないか」。
TAKUYA∞の歌には、日々をせわしなく生きる僕たちをしてそう思わせる完全シンクロ機能が備わっている。
それはひとつのフレーズだったり、たったひと言の言葉だったり、あるいはライヴであれば、MCの熱さであったり様々である。
共通するのは、TAKUYA∞はまず、自分を熱く激しく鼓舞するために、自分を強く奮い立たせるためにやっているのではないか、ということだ。
そして、その「TAKUYA∞による、TAKUYA∞への思い」が僕たちの心とシンクロしていく。

これはどういうことなんだろう?

語弊を恐れず力強く書いてしまうが、僕たちの中にもやはりTAKUYA∞がいるから、なんじゃないかと僕は考えている。
僕は彼らのライヴを観るたびに、今日も俺の中のTAKUYA∞が、TAKUYA∞と一緒に叫び、歌っている――そんなことを思っている。
なんだか恥ずかしい話だが、これがUVERworldの音楽を聴くことだと思うし、もっと言うとロックを聴くというのはそういうことだとすら思っています。

TAKUYA∞の言葉は、僕たちのなかに眠っているTAKUYA∞のような人格をもった何かに対し、「起きろ」「戦え」と伝えてくる。
彼の言葉を受け止めた時に、腹の底からぐわっとこみ上げてくる力。
そして、妙な焦りのような感覚。
TAKUYA∞のメッセージに呼応する自分を感じると僕はいつも嬉しくなる。ほっとする。そして燃えてくる。
変な話だが、俺もTAKUYA∞になれるんだ、と思えてくるのである。
といっても、僕は毎晩何キロも走れないけれど。

このライヴは、かつてデビュー時にサポートメンバーにまわることになった誠果(Manipulator/Sax)が正式に「戻って」からの、初めての巨大空間でのライヴでもある。
「こいつを4万人に見せたいんだ」――ライヴ全編にその思いが溢れている。
だからこそ、TAKUYA∞本人はもちろん、僕たちのなかのTAKUYA∞も全力で燃え上がっていく。
考えてみてもらいたい。
そうやって燃え上がる、熱く狂ったTAKUYA∞的な何かを持ったファンが4万人以上集まっているのである。
その4万人が《人生が二度あるなら こんな険しい道は選ばないだろう/でも一回 たった一回しかチャンスが無いのなら/何もかも諦めて生きていくつもりは無い》と拳を突き上げ、叫んでいるのである。
どう考えてもヤバいだろう。
音楽が記録することのできる、過去最強の瞬間のひとつが間違いなくここにはあると思う。

すでにだいぶ前のライヴなので書いてしまっても問題はないと思うが、ライヴのラストは“MONDO PIECE”である。
アンコールはやらない主義であるUVERworldが特別な時、この大切な時間によりプレシャスな意味を加えるべき時に鳴らす「絆」と「絆を守る決意」を歌った代表曲である。
この曲を歌うステージ上の6人の表情が本当に素晴らしい。
涙を流すでもなく、静かな笑顔を浮かべながら、どこか放心しているようでもあり、しかし一点をしっかりと見据えて歌う6人。
それは何かをやりきった人間のしばしの休息のようでもあり、これからさらに高く飛ぶための「しゃがみ」の時間でもあり、あるいはウイニングランの時間でもあり、なんとも言えず深みのある数分である。
さらに素晴らしいのは、そんな6人と同じ表情をやはり4万人がしていることである。
UVERworldはこの表情を4万人にさせることができるバンドだから、ここまで来れたのだと思う。
歌の力と人間の力。まさに全身全霊である。これがロックの力なのだ。

この作品にはライヴCDも付いている。
普通に生活をしていれば、毎日毎日映像を観るわけにはいかない。
でもCDがあれば、自分のなかのTAKUYA∞をいつでも呼び起こすことができる。熱い思いを持って通勤することができる。
それもとても嬉しい。(小栁大輔)
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