今週の一枚 Mr.Children『himawari』

今週の一枚 Mr.Children『himawari』
住野よる原作の映画『君の膵臓をたべたい』主題歌として書き下ろされた表題曲“himawari”の、「今この瞬間を懸命に生きること」そのものを慈しむ想いを雄大なロックバラードとして描き上げるスケール感。
今年5月まで行われていたホールツアー「ヒカリノアトリエ」からセレクトされたライブテイク“メインストリートに行こう”、“PIANO MAN”、“跳べ”、さらにONE OK ROCKツアーの横浜アリーナ公演にゲスト出演した際の“終わりなき旅”が物語る、「歌と音そのものの豊かさ」を最大限に体現する今のMr.Childrenの「ライブ最進化型」。
そして、2015年のライブハウス2マンツアーで初披露されリリースが待たれていた新曲“忙しい僕ら”の、アレンジャー:世武裕子の手によってひときわ美しく磨きのかかったサウンドスケープ――。

NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』主題歌を収めた『ヒカリノアトリエ』に続き、デビュー25周年を迎えたMr.Childrenがリリースする今作『himawari』に収められたのは全6曲。「シングル」という言葉で語るのがもったいないくらいに、彼らの全方位的な充実ぶりを複層的に伝えてくれる1枚だ。

《優しさの死に化粧で/笑ってるように見せてる/君の覚悟が分かりすぎるから/僕はそっと手を振るだけ》という歌い出しから、確かな足取りで《いつも/透き通るほど真っ直ぐに/明日へ漕ぎだす君がいる》というフレーズへと一歩一歩昇り詰めていく“himawari”での桜井和寿の歌声は、映画のストーリー性と寄り添いながらも、人間と生命に恋焦がれる根源的な情熱を聴く者すべての心に喚起するものだ。
そして、《泣いて 泣き止んで/また泣いて 笑って/忙しい僕らは日々をまた刻んでく》という寓話の如きシンプルな歌詞と穏やかなメロディワークで、「心が忙しい僕たち・私たち」の日々を祝福するかのような“忙しい僕ら”は、非日常のポップ感ではなく「今、ここ」の日常そのものを美しいアンセムへと導いていくようなマジックに満ちている。

思えばMr.Childrenは、2015年のアルバム『REFLECTION』リリースを挟んだアリーナツアー〜スタジアムツアー「未完」とライブハウス対バンツアー(2015年)、デビュー初期以来実に22年ぶりとなったホールツアー「虹」(2016年)から今年の「ヒカリノアトリエ」、さらに現在開催中の全国スタジアム&ドームツアー=「Thanksgiving 25」へ……と切れ間なくツアーを回りライブを重ねている。
ライブによってメロディと楽曲を丹念に育み、そこで培った包容力を新たな楽曲へと注ぎ込む――というロックバンドの根源的なサイクルに、日本屈指のポップモンスターが今なお、いやまさに今こそ至上の喜びを見出していることを、表題曲“himawari”のみならず『himawari』の歌と音のひとつひとつが雄弁に物語っている。(高橋智樹)
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