今週の一枚 androp『androp』

今週の一枚 androp『androp』

androp
『androp』
8月5日 (水) 発売



正確さを美学とするような緻密に積み上げられたサウンドで、「未来」「希望」「光」「夢」といった、「目には見えないもの」を必死で掴もうとしてきたandrop。その表現をアルバムごとに洗練させ、『anew』『note』『door』『relight』『one and zero』『period』という3枚のミニアルバムと3枚のフルアルバムを作り上げ、「androp」というバンド名を完成させた。また、代々木第一体育館での初アリーナワンマンを成功させたことも、バンドとしてひとつ大きな達成感があったのだろう。

内澤崇仁(Vo・G)は、発売中の『ロッキング・オン・ジャパン』9月号におけるインタヴューで、今回のアルバム『androp』制作にあたり、「自分たちのイメージを壊したかった。だから、どうやったら音で熱量が伝わるのかすごく考えた」と語っている。まさに、生々しくて裸の新しいandropが今作では誕生している。

CMソングであり、夏を意識した爽快でブライトな1曲目の“Yeah! Yeah! Yeah!”。《選択肢は幾つもあるはずさ/答えがいつも君の今日になる》。確かなポジティヴィティに貫かれた誠実なメッセージ。そして、2曲目の“From here”。性急でシンプルなギターロックサウンドに乗せて歌われる、《大切なことは幾つもないから/ココから笑って行けるように/越えて》という内澤の叫びは本当に切実だし、聴き手の心に最短距離で手を差し伸べる。

このアルバムでのandropは、フィジカルもメンタルも本当にタフになっている。深い悲しみも傷も、何からも逃げないという確かな勇気を宿した巨大な包容力で包み込む。そして、音楽に委ねることの楽しさも、音楽でひとつになることの歓喜も、故に深まる孤独も――さらに、4人のメンバーの強固な信頼感と絆も――すべてが臨場感あるサウンドに注ぎ込まれている。

そして、ギターレスでピアノとストリングスの打ち込みを軸に作った“Ghost”、ミドルテンポのヒップホップ調の“Letter”、全編英語詞によるEDM的なデジタルサウンド“You Make Me”――。バンドの解放のため、ポジティヴにタガを外したサウンド面でのトライアルも多く、非常に聴き応えがある。

そもそも、その楽曲クオリティに間違いのないandropが、4人のメンバー一丸となって新たな地平を目指し始めた、その輝かしい第一歩だ。名盤。(小松香里)
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