今週の一枚 [Alexandros]『明日、また』
2017.11.29 12:30
およそロックという表現が描き得る限りのスケール感を全身で体現するかのような、雄大なサウンドスケープ。
その楽曲に触れるひとりひとりの覚醒感を壮大な躍動感へと編み上げていく、ハイパーに研ぎ澄まされた音の質感。
そして、最も晴れやかな高揚感とともに歌われるサビの《明日、また/泣きじゃくる時が来たとして/怯まず笑えば/あなたは今まで以上に/強く在れる》という情感豊かなフレーズが、聴く者すべての感情の機微と確かにギアを合わせて前へ先へと突き動かしていく、鮮烈なまでの祝祭感――。
今年2月に発売された『SNOW SOUND / 今まで君が泣いた分取り戻そう』以来約10ヶ月ぶりとなるニューシングルの表題曲――というよりは、すでにこの夏各地フェスにおいてその訴求力とスケール感をバンド自ら実証してきた、文字通り最新最先鋭型の[Alexandros]アンセムである“明日、また”。
“SNOW SOUND”と通底するハイブリッドなサウンドのアレンジメントは、楽曲自体にスタイリッシュな装いを与えるためではなく、むしろ彼ら自身の、ロックの枠組みに収まりきらない闘争心を象徴するテクスチャーとして必要不可欠なものだったのだろう。
今年4月、[Alexandros]にとって2度目の開催となる幕張メッセでのワンマンライブで彼らが体現していたのは、自身最大規模のワンマンライブの充実感よりも、そこからさらにその先を見据えて飛び立とうとする冒険者のロマンだった。
目標と課題が大きければ大きいほどに燃え盛る4人のエモーションが、ロックの限界を押し広げ、[Alexandros]を一歩また一歩と前進させ、また新たな目標をバンドに与える――そんなサイクルを如実に物語る1曲だ。
《We're the light》……“明日、また”の後半、目映く響くコーラスとともに繰り返し掲げられる言葉である。光を操れる「誰か」に憧れるのではなく、自らが光を放つことによって未来を変えていくこと。彼らがこの曲で提示するメッセージはそのまま、ロックに憧れロックを突き詰めた果てに、自らがロックの希望そのものになった[Alexandros]の「今」を何より明快に物語っている。
カップリングとして収録された「MINI」タイアップ曲“I Don't Believe In You”の、ロックンロールの野性を量子化しアップグレードしたかのようなクールな加速感も含め必聴。(高橋智樹)