今週の一枚 BUMP OF CHICKEN 『Hello,world! / コロニー』

今週の一枚 BUMP OF CHICKEN 『Hello,world! / コロニー』

BUMP OF CHICKEN
『Hello,world! / コロニー』
2015年4月22日発売



なにしろ今やみんなが音楽評論家の時代ですからね。
聴いた曲の感想をブログやツイッターで友達よりもちょっと気が利いた言葉で書くことぐらいお手のものだ。
前作との比較やちょっとした分析ぐらい朝飯前だ。

でも、バンプ・オブ・チキンぐらいのレベルになると、
「どうすればこんな曲を作ることができるんだろう?」
というところで立ち止まらざるを得ない。

どうすればこんな曲が生まれてくるんだろう?
どうすればこんな歌詞が生まれてくるんだろう?

バンプ・オブ・チキンに対しては、誰もがリスペクトを持って真摯に向き合わざるを得ない。
アーティストたちと接していても、藤原基央に対して上から目線で語る場面を僕は見たことがない。
藤原基央の破格の才能は誰もが認めるところであり、それでいていまだに誰も分析・解説できない聖域なのだ。

だが、今回のシングル『Hello,world! / コロニー』には、そんな藤原基央のソングライティングの秘密を解く鍵がある。
それについて書いてみる。



今回のシングルの収録曲2曲の内、“コロニー”は映画『寄生獣 完結編』の主題歌で、もう1曲の“Hello,world!”はアニメ『血界戦線』のオープニングテーマである。
どちらもタイアップ曲として発注されて書いた曲だ。
もちろん映画とアニメはまったく別の作品でなんの関連もない。
だから曲調も歌詞も、もちろんまったく違うものだ。
だが、なんとなくだが、この2曲には共通したテーマのようなものがある。
追い詰められた主人公が、その苦境を突き抜けていく姿だ。

そして、みなさんの記憶にまだ新しいと思うが、去年リリースされた前回の配信シングル“ファイター”、“パレード”もまた、2曲ともタイアップ・シングルだった。
“ファイター”は羽海野チカのマンガ『3月のライオン』とのコラボレーション曲、“パレード”は映画『寄生獣』の主題歌だった。
この2曲もまた、まったく曲調の違う曲でありながら、どこか共通するテーマの断片のようなものを共有していた。

これはいったいどういうことなのか?

JAPAN誌のインタビューで藤原基央はそのことに関して説明してくれた。
今回のシングル2曲と前回のシングル2曲は、ほぼ同じ時期に発注されて、ほぼ同じ時期に制作されたものなのである。
つまり、藤原基央の中で、この4曲は同時進行していたのだ。
4曲ともまったく違う映画やアニメの作品のタイアップであり、
まったく違う曲調であり、ただ作っている時期と作っている人間が同じなのだ。

その結果、出来上がった曲は、それぞれまったく異なった主題歌であり、
同時にそれぞれがバンプ・オブ・チキンのシングル曲であり、
そして、どこか共通するテーマ性を持った「その時期」の藤原基央のドキュメントでもある、という4曲となった。

藤原基央はそういうソングライターなのである。

たとえどんなタイアップであろうと、それがシングルであろうとなかろうと、
その時に自分の中で歌いたいことを歌にするだけなのだ。
歌を作る、歌を歌う、という普遍的な行為は何ひとつ動かさずに、
時代の流れの中で開けるべき扉は開いていく。
だから、いつ、どの、どんな曲にもそこにはただバンプ・オブ・チキンがいる。
藤原基央がいる。

バンプ・オブ・チキンが変わらないこと、バンプ・オブ・チキンが変わっていくこと、
その不思議なメカニズムを解く鍵もここにあるんじゃないかと思う。
(山崎洋一郎)
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