今週の一枚 RADWIMPS 『君の名は。』

今週の一枚 RADWIMPS 『君の名は。』 - 通常盤通常盤

RADWIMPS
『君の名は。』
2016年8月24日(水)発売

RADWIMPSのニューアルバム『君の名は。』はご存知の通り、新海誠監督の同名映画のサウンドトラックでもある。
そして同時に、『君の名は。』という映画作品と向き合うことによって、野田洋次郎が精緻なメタファー越しに綴ってきたラブソングが、かつてないほど露わな形で結実した作品でもある。

4つの主題歌“夢灯籠”“前前前世 (movie ver.)”“スパークル (movie ver.)”“なんでもないや (movie ver.)”と、映画でも使用された劇伴音楽が計27曲にわたって収められた今作。
ピアノ/ストリングス/アコギなどを駆使しつつ、時折バンドアンサンブル曲でジャジーだったりポストロックだったりする音世界を編み上げ、壮大なアンビエントトラックを繰り出し……といったインスト劇伴の多彩さだけでも聴きどころ満載だし、“デート”“三葉のテーマ”といったトラックで繰り返し登場するピアノの主題の美しさを堪能したりするサントラならではの楽しさも、今作は十分に与えてくれるものだ。

そして何より――「映画のサントラ」である今作に「RADWIMPSのアルバム」としての確かな手触りと訴求力を与えているのが、前述の主題歌4曲であることは言うまでもない。

《君の髪や瞳だけで胸が痛いよ/同じ時を吸い込んで離したくないよ》《もう迷わない 君のハートに旗を立てるよ》と性急なビートに乗せてダイレクトに歌い上げる“前前前世 (movie ver.)”。流麗なピアノの響きに《愛し方さえも 君の匂いがした》という衒いなき言葉を重ね合わせた“スパークル (movie ver.)”……。
世界との対比の中で「僕」と「君」の物語を描いてきた黙示録的な視点ではなく、「僕」と「君」がすべてと言わんばかりの切迫したラブソングが、ひときわ胸を熱く揺さぶってくる。

《いつもは、つい逃げがちな性格で、ここまでストレートに表現してしまうと恥ずかしさが出てしまい、別の方向性や受け止められ方を求めてしまうんです。だから「恋」をこんなに真っ正面に表現したこと自体、本当に珍しいこと。今回も最初はどこか無意識な逃げがあって、新海監督はその部分を見逃さなかった。「とにかくこの物語が貫こうとしているど真ん中を全力で歌って欲しい」と。だからこそ、踏み込めた》(一部抜粋)

映画『君の名は。』のオフィシャルサイトに寄せられた上記の野田のコメントからは、自分の殻を破るまでの葛藤と、その先に描いた歌の充実感が窺える。
《もう少しだけでいい あと少しだけでいい もう少しだけ くっついていようか》――“なんでもないや (movie ver.)”では、今作に綴られたまっすぐな愛の表現はそのまま、音楽という終わりなき魔法により深く踏み込み、聴く者の心に1mmでも近く迫ろうとする野田の決意そのもののようにも思えてくる。

個人的には、“夢灯籠”の《あぁ 「願ったらなにがしかが叶う」 その言葉の眼をもう見れなくなったのは/一体いつからだろうか なにゆえだろうか》というフレーズを聴いて、昨年12月の幕張メッセワンマンの舞台で「音楽の眼を見て真っ直ぐ『うちらは誠実に生きてますから』って言えるから」と宣言していた野田の言葉が脳裏に蘇ってグッときた。
ここにあるのは紛れもなく、RADWIMPSの「今」の想いが詰まった歌と音楽そのものだ、と改めて感じた。(高橋智樹)
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