今週の一枚 KANA-BOON『アスター』

今週の一枚 KANA-BOON『アスター』 - 『アスター』通常盤『アスター』通常盤
自らの夢を原動力にして新たな夢へと駆け上がっていく――という蒼き成長の過程は、ひとたびその夢のサイクルが乱れた瞬間にバランスを失って途方に暮れてしまう恐れがある。
そこからさらに前進するにはどうすべきか?と言えば、もともとあったサイクルを無理矢理リペアしてそこに自分自身を押し込むよりも、心の赴くままに新たな目標への道筋をデザインしてそこに身を委ねていく方が遥かにベターである――ということを、衝動感と色彩感が絶妙に共存するKANA-BOONの「今」の楽曲に触れるたびに改めて思う。

「KANA-BOONのGO!GO!5周年!」と銘打ってメジャーデビュー5周年イヤーを大爆進中のKANA-BOON。B面集&クリップ集の発売と地元ライブハウス:三国ヶ丘FUZZでのライブイベント5Days「Go Back Home」でアニバーサリーイヤーの幕開けを飾った「シーズン1」をはじめ、トータル5シーズンに及ぶリリース&イベント攻勢が告知されている中、その「シーズン2」として新たにリリースされるのが、今回のミニアルバム『アスター』である。

いずれも「夏」と「恋愛」、そして表題にも掲げられたアスターの花言葉でもある「追憶」をモチーフとした5つの楽曲をコンパイルした今作『アスター』。
陽光あふれる場所を迷いも衒いもなく疾駆するようなリード曲“彷徨う日々とファンファーレ”の開放感。センチメントとロックの躍動感がせめぎ合う“ベガとアルタイル”、“夏蝉の音”。消えない思い出を儚い光に重ね合わせた“線香花火”。そして、《今日の不幸は眠れば消えるからと/嘘にも慣れた》と胸に吹き溜まる葛藤を《心絡まった、また空回った/ひらりひらり》の爽快なフレーズでポップの彼方へと導いてみせる“アスター”――。
デビュー当時のめくるめく加速感とは違う、しかし確かにデビュー以降の5年弱の時間を経た今この瞬間ならではの、リアルな衝動とエモーションと喜怒哀楽が確かに焼き込まれた快盤に仕上がっている。

振り返れば、『DOPPEL』、『TIME』という2枚のアルバムは、2013年9月のメジャーデビューからわずか1年半で日本武道館&大阪城ホール(2015年)、2年半で幕張メッセ(2016年)でのワンマンライブを実現するまでに至ったKANA-BOONの姿をくっきりと浮かび上がらせてくる作品でもあった。夢を足掛かりに次の夢へとステップアップするスリリングな快進撃はそのまま、観る者すべての夢と希望の拠り所となったのである。

しかしそんな中、3rdアルバム『Origin』(2016年)直前の谷口鮪の「『楽しいと感じなきゃいけない』っていうのがすごく強くて」という発言からも窺える通り、彼らは安定軌道から抜け出せなくなった衛星の如き呪縛感に囚われていった。『Origin』はまさに、無垢な夢に胸躍らせた「あの頃」の自分との対比が生んだアルバムでもあった。
そんな「成功ゆえの煩悶」モードを払拭し得たのが、昨年9月にリリースされた4thフルアルバム『NAMiDA』だった。いちバンドとしての自分たちの根幹に立ち返り、己の場所から見える景色に胸焦がし、奮い立つ感情をダイレクトに音に変換して撃ち放つ――。自分たち自身の位置付けしだいで、その居場所が「出口なき衛星軌道」から「誰も辿り着けない絶景」へとネガポジ変換できることを、他でもない彼らの楽曲自身で物語ってみせた。

そして2018年。《ただあてもなく彷徨う日々からはさよなら/君のもとへ走るバスに飛び乗って》(“彷徨う日々とファンファーレ”)と晴れやかに歌い上げる今作は、変わりゆく己の運命すらもロックで祝福しながら次の一歩を踏み出そうとする眩しい生命力に満ちている。「シーズン3」の野外ワンマンも発表され、その先に待ち受けているのは?――と胸高鳴らせるには十分すぎる1枚だ。(高橋智樹)
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