今週の一枚 きのこ帝国

今週の一枚 きのこ帝国

きのこ帝国
『東京』



まだきのこ帝国が始まったばかりの頃に新宿の小さなライブハウスで観た彼らは、植物に例えるとシダのようだった。
シダ植物は非種子植物、つまり花を咲かせずに胞子によって繁殖する。
その頃のきのこ帝国はそんな印象だった。
オルタナ/ポスト・ロック/シューゲイザーの音の壁を築きつつ、そこに絡みながらうねるあーちゃんのフリーキーなギター。
サウンドは生い茂っているのに、佐藤の歌のメロディーはそのサウンドの茂みに隠れるように紛れていた。
いつか花を咲かせる蕾なのかもわからない、青く固く閉じた歌だった。
そこから、ある意味頑ななまでにきのこ帝国は我が道を進んできた。

去年の12月にリリースしたE.P.『ロンググッドバイ』を聴いて、そこに宿った色彩、ポップネス、溢れる感情、光、に僕は驚きを覚えた。
シダ植物だと思っていたきのこ帝国が、淡くて柔らかい蕾を付けていた。
そして、今回のシングル「東京」は、それ以上の驚きだった。
きのこ帝国がきのこ帝国のまま、鮮やかで力強い花を思い切り咲かせている。

椎名林檎を手がけたエンジニア井上うに氏によって録られた、くっきりと輪郭を持った佐藤のヴォーカル。
そしてメロディーは、これまでのように心象風景をトレースするだけではなく、その風景を塗り替えるような強い思いを訴えかけてくる。
ファンやメンバーから怒られるかもしれないが、きのこ帝国が「オルタナ/ポスト・ロック/シューゲイザー」バンドから独自に立つ「ロック・バンド」になった瞬間がこの曲にはあると思う。
名曲。アルバムが本当に楽しみ。
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