【今週の一枚】フジファブリック、15周年に放たれる10枚目のアルバムはなぜ『F』なのか?

【今週の一枚】フジファブリック、15周年に放たれる10枚目のアルバムはなぜ『F』なのか? - 『F』『F』
山内総一郎(Vo・G)自身も「もうこれは二度と作れない決意のアルバム、余すところはありません。フジファブリックのすべてを注ぎ込んだ、言わば魂の結晶です」と確信に満ちたツイートを投稿している通り、デビュー15周年を迎えたフジファブリックの10作目のフルアルバムとなる今作『F』は、ポップの黄金律と親和性の両方に衒いなく手を伸ばしたような、キャリアを代表する傑作に仕上がっている。


《涙で染めないでいい/ここにしかいれないけれど/心の中でずっと 転がって行けばいい》とフジファブリックの「これまで」と「これから」への想いをシンプルかつリアルに焼き込んだ“Walk On The Way”。
《会いたい人に会えたかな なりたい人になれたかな》と伸びやかに広がる山内の歌とメロディが、壮麗なポップオーケストラの如きバンドアンサンブルとともに晴れやかに鳴り渡る“破顔”。
名曲バラード“手紙(Album ver.)”あり、金澤ダイスケ(Key)詞曲のカラフルな疾走ナンバー“恋するパスタ”あり、加藤慎一(B)によるメランコリックポップ“前進リバティ”あり……と多彩な風景を見せる今作。《踊り続けよう友よ》と全力で「今」を謳歌する決意を歌う最後の“東京”まで、そのすべてがポップミュージックへの弾むような情熱と信頼感に裏打ちされている。


そして、今作のタイトル『F』。フジファブリックの頭文字を冠した、言わば「二度目のセルフタイトルアルバム」でもあると同時に、今作からはさまざまな「F」が随所に窺える。
ロックンロール祭囃子的なビート感から文字通り「Fever」=熱狂が滲む“Feverman”をはじめ、「Food」(“恋するパスタ”)、「ふるさと」(“手紙”)、「友=Friend」(“東京”)など直接楽曲のテーマに絡む「F」もあれば、“LET’S GET IT ON”のマジカルな音像に交錯する「Funkadelic」とPink「Floyd」のような音楽的ルーツ感など、聴けば聴くほど新たな「F」に気づくことだろう。そんな楽しさに満ちた作品でもある。

何より、自ら「F」というテーマを設定して臨んだアルバムの制作を、持てる才気の限りを尽くして3人が楽しみきっていることを、今作は何より明快に伝えている。3月からのツアーも、10月の15周年記念大阪城ホール公演「IN MY TOWN」も、最高の音楽空間になることだろう。そんな期待感を呼び起こしてくれる1枚だ。(高橋智樹)
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