今週の一枚 Hi-STANDARD『Vintage & New, Gift Shits』

今週の一枚 Hi-STANDARD『Vintage & New, Gift Shits』

2016年10月5日に16年振りのリリースとなるシングル『ANOTHER STARTING LINE』が、一切の事前告知なしでCDショップに並ぶという、衝撃と歓喜の事件から2ヶ月。
早くも我らがHi-STANDARDがニューシングルをリリースする。4曲入りのカバーシングル『Vintage & New, Gift Shits』。とは言え、ただのカバーシングルではない。クリスマスプレゼントのような、スペシャルな一枚に仕上がっているのである。

これまでも、パパス&ママスの“CALIFORNIA DREAMIN’”から、アニメ『キテレツ大百科』の主題歌“はじめてのチュウ”の英語バージョン“MY FIRST KISS”まで、時代もジャンルも様々な楽曲を、絶妙なセレクトで痛快にカバーしてきた彼ら。そして、このたび新たに制作されたカバーは、ザ・ビーチ・ボーイズの“I Get Around”とスプリームスの“You Can’t Hurry Love”の2曲である。どちらも、1960年代に大ヒットしたオールディーズでありながら、聴けば誰もが「ああ、これね!」と頷くであろう、時代を越えて親しまれている楽曲だ。

プレイボタンを押すと、まず流れ出すのは“I Get Around”。美しいコーラスワークは、ハイスタとザ・ビーチ・ボーイズの共通点だなあ……と思いながら聴き惚れていると、突如テンポアップ! 驚きつつも、これぞハイスタ! と嬉しくなる。その後も緩急を付けた展開で、聴き手を飽きさせない。

続いて、“You Can’t Hurry Love”。甘いメロディにピッタリの、難波章浩(Vo・B)と横山健(G・Vo)の掛け合いボーカルがグッとくる。遊び心たっぷりの恒岡章(Dr)のリズムパターンも、ワクワクを加速させるには十二分だ。この2曲を聴いていると、ハイスタが止まっている間に3人が吸収してきた音楽的センスが感じられる。シンプルながら豊かなカバーだと思う。

そして、3曲目と4曲目は、同じカバーでもちょっぴり粗削りな印象。何故なら、この2曲は、1997年にリリースされた7インチのCD化だから。3曲目はザ・ブレインズ(シンディ・ローパーのバージョンが有名)のカバー“Money Changes Everything”。4曲目は、ドイツのWIZOとのスプリットシングルに収録されていた、ジョン・レノンのカバー“Happy Xmas (War Is Over)”。当時、どちらの作品も事前告知なしで店頭に並び、すぐに入手困難になってしまったため、20年越しの待望のCD化となる。あれ、この「事前告知なし」という状況、『ANOTHER STARTING LINE』と同じじゃないか? ……こういうストーリーも憎いところだ。個人的には、激烈エモーショナルなアレンジの“Happy Xmas (War Is Over)”が、当時から今に至るまでナンバーワンのクリスマスソングだと思っているので、これをさらにたくさんの人が耳にすることが、涙ちょちょぎれるほど嬉しい。

今作のリリースのみならず、東北・北陸を回るショートツアーに、福岡での「AIR JAM 2016」と、ハイスタの12月は忙しい。サンタさんか!? いやいや、季節限定では切ない! これからの動向も注目していこう。(高橋美穂)
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