今週の一枚 BUMP OF CHICKEN 『BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live「20」』

今週の一枚 BUMP OF CHICKEN 『BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live「20」』

BUMP OF CHICKEN
『BUMP OF CHICKEN 結成20周年記念Special Live「20」』
2016年7月13日(水)発売

BUMP OF CHICKEN初のスタジアムツアー「BUMP OF CHICKEN STADIUM TOUR 2016 "BFLY"」も、今週末開催の日産スタジアム2DAYS公演でいよいよフィナーレ――というタイミングでリリースされる、結成20周年記念Special Live「20」のライブDVD/Blu-ray作品。

開演早々から満場のシンガロングを呼び起こした“天体観測”や“K”“ガラスのブルース”など初期アンセムの数々から、“Butterfly”や“Hello,world!”といった最新アルバム『Butterflies』の楽曲まで、20年間の足跡を凝縮した内容だけでも十分に感慨深いし、実はこの日がライブ初演奏となった“ベル”や久々に披露された“ナイフ”、さらにバンド結成当時のナンバー“BUMP OF CHICKENのテーマ”まで……結成以降20年間の歴史を、幕張メッセ満場のオーディエンスとステージの4人が万感の想いで共有し合っていたあの日の祝祭空間が、今作からもリアルに伝わってくる。

同時に、僕がこの記念すべき20周年記念ライブを実際に観て、そして改めて今作の映像を観て特に強く印象に残ったのは、この日のステージ自体の途方もないスケール感からすれば驚くほどに、シンプルでソリッドなロックアクトそのものだった、という点だ。

舞台背後に掲げられたバックドロップとメンバーの姿を映す両袖のビジョン、レーザー光線など最低限の演出を除けば、巨大な会場内に存在するのは2万5千人の観客と、メンバー4人の奏でる楽曲とMCで語られる言葉だけ。
アニバーサリーなタイミングのライブにつきものの仕掛けやギミックによってではなく、その歌で、音楽で、ひとりひとりの心とがっちりギアを合わせて、自らの20年史を「今、ここ」に繰り広げていく。その光景はまさに、ひたむきに音楽を響かせることのみで時代を切り開いてきたBUMPの歩みそのものだった。

そして。今作における4人の佇まいは、多数のLEDスクリーンを駆使した映像演出&『Butterflies』の楽曲を数多く盛り込んだセットリストによってBUMP自身の「最新型」を体現している「BFLY」ツアーとも大きく異なる。
彼らの新たなトレードマークとなったナポレオンジャケット風のコスチュームではなく、黒シャツ姿の藤原、タンクトップ姿のチャマをはじめ至ってカジュアルな4人の出で立ちも、あらゆるコンセプトや意匠を脱ぎ捨ててファンとともに最高の記念日を祝い合う、この日の特別なモードを象徴していると言えるだろう。

「『支えてくれてありがとう』なんて、ベタすぎんじゃん?」と言いつつも「みんなが聴いてくれてたから、僕たちが20年やり続けることができました。どうもありがとうございました!」と藤原は満場の観客に真っ直ぐ呼びかけていた。

音楽の歴史から受け継いだブルースロックの魂を、その情熱と才気によって丹念に研ぎ澄ませ鍛え上げることで、90年代末以降のロックシーンをリードする鮮烈なギターロックへと極限進化させてきたBUMP。そして、『RAY』『Butterflies』でさらなる革新の季節へ……。
そんな彼らの20年史はそのまま、BUMP OF CHICKENの音楽を愛してきた僕らの歴史でもある――ということを、この日の4人は確かに示してくれていた。

BUMP史のみならずロック史的に見ても、2016年という時代に深々と刻みつけておきたい、そしてひとりでも多くの音楽ファンの心に焼き付けておいてほしい、そんな映像作品だ。(高橋智樹)
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