今週の一枚 FLOWER FLOWER『宝物』

今週の一枚 FLOWER FLOWER『宝物』

FLOWER FLOWER
『宝物』
2016年9月7日発売

《君が死ぬ時は僕の息も止めてよ》という、生命の手触りを言葉でなぞるような切迫したフレーズで幕を開ける詞世界。ウィスパーボイス&伸びやかな歌声と、エレピ主体の柔らかなアンサンブルがお互いを丹念に温め合うような、yuiの歌とサウンドの一体感――。

昨年のミニアルバム『色』以来約1年半ぶりの新作にして、FLOWER FLOWER初となるシングル。その表題曲として選ばれたのは、FLOWER FLOWERが正式始動前からシークレットライブでも披露していた“宝物”だった。

ゆっくりと、しかし確かに、鼓動のように時を刻むリズムの中で、《君がいない世界なんて/僕にとっては意味がない》と「僕」目線で綴られる抑え難い愛情。
そして、冒頭の《君が死ぬ時は僕の息も止めてよ》という「僕」の懇願に対して、この曲のラストは《もし私がいなくなっても/ちゃんと生きてゆくのよ》という「私」目線からの祈りの言葉で締め括られる――。
目の前にいる「君」の感情の質感を確かめることはすなわち、自分自身のアイデンティティを確かめながら今この瞬間を生きることでもある。そんなふうに密接に寄り添うふたつの心の描写が、聴き返すごとに胸に迫る。そんな楽曲だ。

なお、今作の初回生産限定盤には、2013年3月に行われた前述のシークレットライブから“とうめいなうた”“宝物”“スタートライン”のライブテイクを収めた「Disc-2」が同梱されている。
そのライブバージョンと今作の“宝物”のスタジオテイクを聴き比べてみると、この3年あまりの間に、この楽曲がより秘めやかで濃密な空気感と、ある種の迫力とでも言うべき切実な空気感を帯びていることを感じるはずだ。
そんな“宝物”の変化を、yuiが家庭を持ち母になったという「今」の状況と結びつけて語るのはあまりに短絡的かもしれないが、少なくともyuiの歌がより鮮明に、人間の心と生命の神秘にフォーカスを合わせていることは、“宝物”のスタジオテイクが確かに証明している。

そして、カップリングの“炎”。
スロウ&グルーヴィーなレゲエ〜R&B系のビートと《君の私になって》《君と私になって》のリフレインが醸し出す浮遊感が、中盤以降のリズムの変遷とともに次々に色彩を変え、壮大なスケールの音風景を描き出していく。
4人にとって2年ぶりとなる2016年第1弾のセッションを基に生まれたというこの曲が、FLOWER FLOWERのバンドとしてのポテンシャルの高さをまざまざと伝えてくる。FLOWER FLOWERの物語が再び始まった――そんな実感を与えてくれるには十分すぎる1枚だ。(高橋智樹)
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