ノラ・ジョーンズ、一夜限りのプレミア・ライブを観た!

ノラ・ジョーンズ、一夜限りのプレミア・ライブを観た! - pic by 濱谷幸江pic by 濱谷幸江

10月5日に新作『デイ・ブレイクス』をリリースするノラ・ジョーンズだが、その新作の一部をノラがピアノで紹介するショーケース・ライブが9月7日に東京で行われた。新作からはすでに新曲"Carry On"のビデオが公開されていて、こちらはゆったりしたニューオリンズ風のピアノを軸にしたソウル・ナンバーになっていて、オリジナル作品としての前作となる2012年の『リトル・ブロークン・ハーツ』からはまた大きく方向を転換した内容を窺わせていた。

ライブ前にはジョン・カビラによる前説とノラへのインタビューが行われ、今回の作品の方向性についてひもとく瞬間もあった。もともとノラはジャズ・ヴォーカル風のサウンドとカントリー寄りのシンガー・ソングライター的な作風が絶妙に融合したパフォーマンスで世界的なブレイクをデビュー・アルバムで果たすことになったが、今作ではウェイン・ショーターなどジャズ界の巨匠らと共演している。それについてジョン・カビラに問われると、ノラは2014年に所属レーベルのブルーノートの75周年記念ライブの際にウェイン・ショーター、ブライアン・ブレイドらの面々をバック・バンドとして歌を提供する機会に恵まれどうしてもこの面子でまた仕事をしたいという一念から今回の新作となる楽曲を用意したと説明した。たとえば、前作『リトル・ブロークン・ハーツ』はデンジャー・マウスとの全面的なコラボレーションとなり、非常にコンテンポラリーな試みともなったわけだが、そこからの今回の大きな方向転換は別に原点回帰などといったものではなく、純粋に今現在のノラの新しいインスピレーションとしてやりたいことだったことをあっけらかんとひもといた後、ダブル・ベースとドラムをしたがえ、自身はピアノで新曲を披露した。

1曲目は“Carry On”で、これはビデオでも聴けたようにある意味ではノラの弾き語りの真骨頂。ファンにとってもこの上なく新作の世界観へと入り込みやすいナンバーだが、R&Bピアノの手くせをふんだんに披露していったのがとても印象的だった。

続いたのはいかにもジャズっぽいベースのリフを軸にノラがコードを絡めていくスリリングなナンバーで、歌詞から考えておそらく新作からの“It's a Wonderful Time for Love”で、アレンジ的にも最も洗練された曲だったように思う。

続く新曲はおそらく“Tragedy”でベースもエレクトリックに持ち替えての演奏で、最もコンテンポラリーなナンバーとなった。どことなく息づかいを感じさせるような近さを曲調として滲み出させているところがとても魅力的でなにかに似ているんだけどどうしてもわからないフックもまた強烈。この日披露された楽曲では最も際立った曲で、新作が多様な曲を揃えていることを窺わせた。

次はよりソフトでスタンダード・ナンバー的な“And Then There Was You”で新たな愛との出逢いを歌い、そしてよりブルースとしてのエッジを打ち出した曲へと続いたがこの曲のタイトルは判別つかなかった。ただ、歌詞の内容の強さから考えて“Flipside”という曲かもしれない。

最後は初期のソングライター・パートナーだったジェシー・ハリスも参加してファーストからの“Don't Know Why”というあまりにもきれいな落としどころでライブ終了。楽曲的にはノラの本領を見せつけるものでありつつ、歌詞的にはここ数作とは違って力強さを感じさせたのが今のノラの新しさとして伝わってとても印象的だった。(高見展)
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