今週の一枚 菅田将暉『見たこともない景色』

今週の一枚 菅田将暉『見たこともない景色』

家でテレビを点ければ映画にドラマにバラエティにCM、外に出れば雑誌の表紙や街頭広告――わたしたちは今、菅田将暉の姿を見ない日はないんじゃないか?と真剣に思う。才能に才能を重ねて才能で包んだような、まさに「天は二物を与えず」という言葉の相反者的存在・菅田将暉。大袈裟に聞こえるかもしれないが、彼の活躍っぷりを鑑みれば言い過ぎではないはず。

そんな彼が、2017年6月7日(水)に「音楽アーティスト役」ではなく「音楽アーティスト」として『見たこともない景色』でデビューすることになった訳だが、無理を感じない声量なのに真っ直ぐ突き抜けるような声や、ギタリストとしても定評がある故の安定した音程感たるや――俳優として「場に溶け込みながらも存在感を出すこと」に長けている彼だったが、そのポテンシャルが歌い手としてもここまで如実に表れるとは! ≪泥臭くていい/かっこ悪くていい/そこから見える景色/同じ景色を見よう≫サッカー日本代表を応援する「熱い言葉」をただなぞって歌うのではなく、自分の中に言葉とシチュエーションを落とし込み、消化・変換をして歌に自分の想いを宿して熱くする。そんな「誰かの心に届く歌を歌うことの大前提」を、彼は人から学ぶことなく自然体のままやってのけている。だからカップリングの“ばかになっちゃったのかな”の等身大の恋愛事情も自分事のようにすっと受け入れられるし、例えるなら「バンドでボーカルをやっている男友達の曲」くらいの距離感で寄り添えるのだ。この距離は努力して縮められるようなものではないし、いわば「演じる者としての才能を生かした、演じることのないアーティスト」という全く新しい音楽ジャンルの先駆者的存在になる気がしてやまない。やっぱり菅田の才能や魅力は計り知れないなと感服してしまう。

彼自身バンドサウンドが好きということもあり、いつかは「作詞作曲演奏を自分で手掛けること」を目標に掲げているそうだが、それが実現されるのも遠い未来の話ではないだろう。アーティスト・菅田将暉のこれからの活動が楽しみだ。(峯岸利恵)
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