今週の一枚 UVERworld『ODD FUTURE』

今週の一枚 UVERworld『ODD FUTURE』 - 『ODD FUTURE』通常盤『ODD FUTURE』通常盤
シングルとしては『DECIDED』以来、約10ヶ月ぶり。7月にリリース予定のオールタイムベスト盤に向け、CREWの収録曲投票受け付けもスタートさせたUVERworldだが、『ODD FUTURE』=いびつな未来と名付けられたニューシングルの表題曲はTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』OPテーマとしてこの4月からオンエアされている。

『ヒロアカ』は、歴代『週刊少年ジャンプ』原作マンガ及びアニメ作品が描いてきた「ヒーロー」というテーマを意図的に継承しようとしてきた作品であり、生まれながらに歴史の枷から逃れられない運命を背負っている。そんな作品のテーマ曲として、TAKUYA∞(Vo・PROGRAMMING)が投げかける歌詞はたとえばこんなふうである。

《全ては身から出た錆/羽振りよく増やした黒歴史/ありとあらゆる物を捨てたり/身に覚えのない運命に 殺されかけた事もあったし/死んだ目をして生きた時期/それでも今日も生かされてるって事は》

歴史はときに未来の手がかりをもたらしてくれることもあるが、負の遺産で目の前の現実を黒く埋め尽くしてしまうこともある。歴史が希望を指し示してくれないとき、人は暗澹とした気持ちで途方に暮れるだろう。TAKUYA∞はそのことを率直に歌っている。溢れ返ったネガティブな言葉の海を泳ぎ、いびつだろうが何だろうがその先に見える景色こそが未来なのだと告げている。なんてタフな歌なのだろう。

憂いを帯びたオートチューンのソウルボーカルで始まる“ODD FUTURE”は、克哉(G)とTAKUYA∞による作曲。『TYCOON』のシーズンを通して示されてきた奥行きのあるボーカル表現を駆使し、音楽の物語的な説得力をもってメッセージを届けてくる。ポストEDMのサウンドプロダクションを、次第にUVERworldの生々しいバンドダイナミズムが追い越してゆく構成も素晴らしい。これはただアニメ作品のテーマ曲であるというよりも、我々の現代生活のテーマ曲だ。

一方でカップリングの“PLOT”は、ソリッドなアコギのリフがTAKUYA∞の今にも噛みつきそうなドスの効いた歌声を導くナンバー。ロックなアタック感においては表題曲を凌いでいるし、コーラスの援護射撃を含めて爆発力が凄まじい。また、3トラック目の“CORE STREAM”は、「TYCOON TOUR」で披露されていた重厚にしてスリリングな最新インスト曲だ。猛烈な勢いでUVERworldのロックシンフォニーが押し寄せてくる。

ファンと共に新しいベスト盤を作り上げ過去の道のりを再確認する前に、『ODD FUTURE』=いびつな未来との向き合い方を提示しておくことは、バンドの姿勢としてとても大切なことだったのではないだろうか。

また、来るベスト盤に関しては「メンバーセレクトベスト」、「CREW投票によるベスト」、「バラードベスト」の3枚組になる予定とのこと。とりわけバラードベストは、バンドの熱量や斬新なサウンドプロダクションの先で、かつてないほど奥深い歌心を備えたUVERworldの現在地を浮き彫りにしてくれるのではないかと想像する。こちらも今から楽しみだ。(小池宏和)
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