今週の一枚 エレファントカシマシ『夢を追う旅人』

今週の一枚 エレファントカシマシ『夢を追う旅人』

エレファントカシマシの48枚目のシングルがリリースされた。“夢を追う旅人”、そしてカップリングの“i am hungry”ともに、昨年リリースしたアルバム『RAINBOW』で見せた、大きく突き抜けたエネルギーの放出がそのまま続いているような、とても力強いメッセージを感じる楽曲である。“夢を追う旅人”は、明治のCMで、すでに耳にしていた人も多いはず。まっすぐに明日へ踏み出すための力を言葉にしたこの曲は、長いキャリアの中で様々な困難や迷いを乗り越えた、現在の宮本浩次だからこそたどりつくことができた作品だ。

CMソングとしての特性上、企業側のリクエストに応えた《POWER ひとくちの力》という言葉がキーワードとして歌詞に織り込まれているのだが、この言葉が宮本のイマジネーションを、非常にポジティブな方向へと導いたのだと思う。《POWER とびきりの明日へ 唇から魂へ POWER ひとくちの力》と歌詞にあるように、《唇から魂へ》届けられるのは、《ひとくちの力》、つまり、生きるためのエネルギーである食物であると同時に、誰かの発する言葉や自らが口にした言葉のことでもある。

魂にまで届く言葉は、そのまま生きるパワーだ。この“夢を追う旅人”という曲自体が、私たちにそのパワーをくれるものとして存在し、宮本自身も、この曲を歌うことによってさらなるパワーを得ているような、そんな気さえする。良いことも悪いことも、いずれにせよ生きていれば直面する難儀な出来事の数々。それを嘆くよりも、受け入れて前に進むためのエネルギーが私たちには必要だ。そのエネルギーがこの楽曲には存分に宿っていて、まさに宮本の唇から私たちの魂へと届けられる《ひとくちの力》として鳴り響く。

カップリングの“i am hungry”もドラマのタイアップ曲として書き下ろされたものなのだが、これが“夢を追う旅人”と図らずも対になっているような力強さを持つ楽曲で、《i am hungry アンド angry》な日常から、《もえろ心 飛び立て 未来へ/取り敢えず 行くぜ》と、こちらも嘆きのその先へ踏み出すことをストレートに言葉にしている。痛快で華やかなロックンロールサウンドがまた、バンドとしてのアグレッシブさを物語る。

来年にはデビュー30周年を迎える彼らが、バンドとしてこれからさらに強かに確かな足取りで進んでいくことを実感させてくれた今回のシングル。長いキャリアや重ねてきた経験が、とても良い形で現在のエレカシから表現されているのが嬉しい。決して円熟して落ち着いていくのではなく、まだまだ一波乱起こしてくれそうな、そんな予感に満ちているのだ。今年で27年連続となる恒例の日比谷野音ライブも、今回は2Daysでの開催が決まった。このシングル曲2曲が、日比谷の空にどのように響くのか、今からとても楽しみだ。(杉浦美恵)
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