今週の一枚 [Alexandros]『EXIST!』

今週の一枚 [Alexandros]『EXIST!』

「ロックはここまで自由になれる!」という感覚は、それこそメジャー1stアルバムとなった前作『ALXD』にも、その前の『Me No Do Karate.』にもあった。そして、そこからさらに大きく自由にロックの翼を拡げている4人のタフネスは、“Girl A”“NEW WALL”“I want u to love me”“Swan”といったシングル曲群からも十分に「その先」への予兆として伝わってきていた。
だが、[Alexandros]自身約1年半ぶりとなるニューアルバムの14曲を改めて通して聴き終わった瞬間、あなたの目の前には今までとは比較にならないくらいに途方もなく雄大なロックの大平原が広がっていることを感じるに違いない。それくらいの極限進化盤だ。

聴く者の感情を清冽な高揚感の彼方へと導いていく“ムーンソング”。インダストリアルな質感の音像とレッド・ホット・チリ・ペッパーズばりのミクスチャー感がせめぎ合う“Kaiju”。デジタルハードコアなイントロからガレージ感ばりばりのささくれまくったロックンロールへと駆け出していく“Claw”。ソウル〜ファンク感あふれる洋楽ポップス風サウンドと東京の風景を直結してみせた“Aoyama”。4人の野性が極彩色の躍動感を描き出す“Buzz Off!”“クソッタレな貴様らへ”――。

《俺たちはロックンロール、ヘビーメタル/ジャズ、フュージョン、/サイケ、ラップ、テクノ、アンビエントもやりたいんだ/そろそろ先を急ぐぜ/遅れる奴を待つつもりはない/クソッタレな奴は(“クソッタレな貴様らへ”訳詞)》というフレーズの通り、ジャンルもスタイルも省みることなくアグレッシブに響かせるサウンドの数々は実に多種多様ながら、それらが指し示しているものはひとつだ。
「14曲でひとつの物語を生み出している」というのとはまた違う。まったく別の色の輝きを放つ14のピースが乱反射しながら、「もっともっとずっと先のロックの風景を見たい、見せたい」という想いをくっきりと浮かび上がらせていく、ということだ。

「『“[Alexandros]らしい”ってものはないんじゃないか?』っていうことにそろそろ気づいてほしいな、っていうのはバンドとしてあるんですよね。『この人たち、路線とかそういうのないんだ、最初っから』って」……“ムーンソング”“Claw”を初オンエアしたTOKYO FM『SCHOOL OF LOCK!』で、川上洋平は自身のバンドの在り方をそう語っていた。
今作に凝縮された最高の歌もリフもリズムも、「今、ここ」に安住してそれ自体を愛でることではなく、リスクも不安もかなぐり捨てて目の前の壁を越えることにシビアに照準を合わせている。そして、その無限のフロンティアスピリットそのものが、彼らの楽曲を至上のロックンロールとして響き渡らせている最大の原動力である――ということを、今作は真っ向から物語っている。

《大嫌いな/大人達に/楯突いていこうぜ/大抵はそう/叶う前に壊されるから/当たり前のように/どんでん返し狙ってやろう》(“I want u to love me”)
ありとあらゆるポップミュージックのフォーマットが出揃った2016年の今、ロックがかくも痛快な表現たり得ていることを、心から嬉しく思う。(高橋智樹)
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