今週の一枚 キュウソネコカミ『人生はまだまだ続く』

今週の一枚 キュウソネコカミ『人生はまだまだ続く』

キュウソネコカミ
『人生はまだまだ続く』
2015年10月21日発売



昨年ミニアルバム『チェンジ ザ ワールド』でメジャーデビューを果たして以降、彼らはコンスタントに作品をリリースし、その人気を確実なものにしていく一方で、このメジャーシーンで生き残っていくにはどうするべきかをずっと考えていた。その「次なる一手」として作られたのが今年1月にリリースされた『ハッピーポンコツランド』というミニアルバムだった。リリース前にヤマサキ セイヤ(Vo・G)とヨコタ シンノスケ(Key・Vo)にインタヴューをした際、彼らは口を揃えてこの『ハッピーポンコツランド』は次への布石だと発言していた。「フェスで盛り上がる鉄板バンド」「社会に痛快に切り込むディスネタバンド」というキュウソネコカミのイメージを乗り越え、より広いフィールドに進出するためのトライアル。それまでのキュウソ楽曲とは違うスケールの楽曲となった同作のリード曲“GALAXY”はそれを標榜して作られた曲だったのだ。

確かに、サイクルの速い現在のシーンにおいて、どのバンドもそのサイクルに巻き込まれないように自分たちだけのスタイルや武器を手に入れようと必死だ。とりわけ、キュウソネコカミはシーンの趨勢やお客さんの反応に対して敏感すぎるほど敏感に、誠実すぎるほど誠実に、向き合い続けてきたバンドである。だからこそ、一刻も早く自分たちの手でその「先」に行かなければならない――そんなある種の危機感が、『ハッピーポンコツランド』当時の彼らにはあったのだろう。

もちろん、その危機感は今も消えたわけではないだろう。しかし本作のキュウソネコカミはそれを「キュウソらしさをさらに極める」という方法で乗り越えた。アルバムタイトルの『人生はまだまだ続く』という言葉は彼らのある曲の一節からの引用だが、こうしてアルバム全体を象徴する言葉としてこのタイトルを見つめるとき、そこには「キュウソネコカミは簡単には終わらん、まだまだ生き続ける」という宣言としての意味も浮かんでくるのである。

『ハッピーポンコツランド』のツアーで得た手応え、セイヤを襲ったヘルペス感染による顔面麻痺(それについては本作の“ヤブ医者”という曲にネタとして使われている)、初のシングルにして大型タイアップソングとなった“MEGA SHAKE IT !”におけるある種の開き直りのような「キュウソらしさ」の引き受け方、それらすべてが相まって、『人生はまだまだ続く』はキュウソがキュウソであることを証明するような作品となった。ここにはキュウソネコカミをキュウソネコカミたらしめているすべて、つまり世の中に対する観察眼とシャープな批評性、客を巻き込むエンターテインメント性、古今東西の音楽に対する「リスペクト」とライヴを想定したネタの数々……が注ぎ込まれているのだ。

年頃の娘にあしらわれウザがられる父親の悲哀をシャウトする“泣くな親父”のようなキュウソ一流の視点が炸裂した曲もあれば、レッチリも真っ青なグルーヴが爆発する“ビーフ or チキン”もあるし、セルフパロディともいえるまさかのネコ媚びソング“NEKOSAMA”もある。美しいメロディとちょっと和風なコード感が新鮮な“春になっても”も、ウィットとストレートなメッセージが同居する“適度に武士道、サムライBOYS。”もある。しかもそれがただの過去の模倣ではなく、しっかりとした音楽的地盤の強化ともリンクしたものになっているところに、バンドの気合いと本気度がうかがえる。満を持して生み出された真の代表作、それが彼らのメジャー初にして通算3作目となるフルアルバム『人生はまだまだ続く』である。キュウソネコカミによる『キュウソネコカミ』――あえてこの『人生はまだまだ続く』というアルバムを一言で説明しろと言われたら、僕はこう表現する。(小川智宏)
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