それこそTaka(Vo)/Toru(G)/Ryota(B)/Tomoya(Dr)の4人が己の持てるすべてをハイブリッドな音像の中で遠心分離して究極の核心を掴み取ったような、透徹したサウンドスケープ。
野性の暴発や衝動の炸裂といった旧来型のロックの原動力ではなく、未知なる次元への祈りにも似たクリアで切迫した、それでいてどうしようもなくリアルな世界観に貫かれた楽曲のメッセージ性。
“Taking Off”をはじめ前作『Ambitions』にも貫かれていた、ロックの「その先」の表現を追求する情熱が、ONE OK ROCK自身に驚くほどの極限進化をもたらすに至った――彼らにとって約2年ぶり・9作目のアルバムとなる『Eye of the Storm』はそういう作品だ。
バンドアンサンブルを量子化した果てに高純度な躍動感を描き出したような“Head High”。クールに研ぎ澄まされたビート越しに未曾有のダイナミズムを展開してみせる“Grow Old Die Young”。極彩色ゴスペル調コーラスがスタジアム級のスケール感で吹き荒れる“Push Back”……。
“Change”や“Stand Out Fit In”、“Wasted Nights”といった既発曲群で見せた新たな地平への予兆を、1曲また1曲と更新していくような先進性が、今作全体にドラマチックなまでの革新をもたらしている。
多数のソングライターが参加して楽曲をブラッシュアップするUSポップシーン最前線的なソングライティングに貪欲に挑んだ中で生まれた今作が物語るのは、個々のフレーズやプレイスタイルといったディテールよりもむしろ「止まることなく先へ進み続ける加速度」にこそ自分たちのアイデンティティを求める不屈のアティテュードだ。
『Ambitions』リリース後も国内のみならずアメリカ/ヨーロッパ/アジアなど世界中を飛び回りつつ、昨年には初のドームツアー、さらにはオーケストラとの共演ツアーも実現していたONE OK ROCK。
その一方で、東京ドーム公演でTakaは「ONE OK ROCKというバンドは、もうそろそろ『第1章』にピリオドを打って『第2章』の幕開けを迎えてもいい時期なんじゃないかなって」と「次」へのブレイクスルーを渇望する焦燥感を語っていたし、オーケストラツアーでは過去曲のリアレンジ作業を通して得た実感を「ONE OK ROCKって最初の方はね、がっつり歌謡曲なんですよ。すごくJ-POPで」とストレートに口にしていた。
《始まりを知らせる声が/どこからかそっと聞こえる/その声は自分自身だった》……今作の最終曲“The Last Time”でTakaが歌うそんな言葉はそのまま、彼ら自身のさらなる前進を告げる決意表明であり、新たなサウンドフォーマット越しに「世界を突き動かす壮大なる波動としてのロック」を希求する魂が刻みつけた黙示録でもある。
果たしてこのアルバムの世界がライブのステージでどのように表現され、いかなる高揚の景色を編み上げていくのか。今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)