●セットリスト
01.Change
02.Ending Story??
03.欠落オートメーション
04.Cry out
05.Decision
06.アンサイズクリア
07.欲望に満ちた青年団
08.カゲロウ
09.Yes I am
10.One Way Ticket
11.Pierce
12.[Instrumental]
13.新曲
14.I was King
15.The Beginning
16.Mighty Long Fall
17.Fight the night
En1.We are
En2.完全感覚Dreamer
「『ONE OK ROCK with Orchestra』へようこそ! さいたまスーパーアリーナ2日目、今日は『懐かしいONE OK ROCK』、『新しいONE OK ROCK』、全部見せて帰します!」
広大な空間に響き渡るTaka(Vo)の高らかな宣誓が、さいたまスーパーアリーナ満場のオーディエンスを歓喜と熱狂の巨大な渦へと巻き込んでいく――。
今年春には自身初のドームツアーを敢行したONE OK ROCKが新たなトライアルとして取り組んだのは、10月20・21日:さいたまスーパーアリーナ、10月30・31日:大阪城ホールの2会場4公演にわたってオーケストラとの共演を繰り広げるアリーナツアー「ONE OK ROCK with Orchestra Japan Tour 2018」だった。
これまでサポートメンバーも入れず、メンバー4人だけで舞台に立ってきたONE OK ROCKが、総勢53人に及ぶ大編成のオーケストラとの共演を通して、自らのキャリアも音楽性も対象化しつつ「その先」への意志をより鮮明に掲げてみせた、画期的なロックアクトだった。
ステージからオーケストラのチューニングの音が壮麗に立ち昇る――という開幕の風景が、今までのONE OK ROCKのライブとは別種の期待感を呼び起こす中、黒スーツ姿のTaka/Toru(G)/Ryota(B)/Tomoya(Dr)が登場。 現時点での最新配信シングル曲“Change”が、壮麗なロックシンフォニーへとリアレンジされた形で響き渡ると、たまアリのオーディエンスの熱量は一気にクライマックス級の高まりを見せる。「Sing it!」と呼びかけるTakaに応えて、熱い歌声が会場狭しと吹き荒れていく。
そのまま“Ending Story??”、さらにストリングスの重厚なイントロやサビでのホーンアレンジが印象的な“欠落オートメーション”へ……と次々と楽曲を畳み掛け、一面のクラップとシンガロングを巻き起こしてみせる。
「声出していけよ埼玉!」というTakaの煽りとともに、会場を揺さぶるほどの熱量を生み出した“Cry out”。Toruのアコースティックギターとオーケストラのハープの響きが美しい音像を編み上げた“アンサイズクリア”。「ONE OK ROCKのロックサウンドにオーケストラの伴奏で彩りを添えた」のではなく、4人+53人でONE OK ROCKの音楽を解体し再構築するという化学反応の果てにしか鳴り得ないマジカルなロックの絶景が、そこには確かにあった。
「このオーケストラツアー、すごく楽しみにしてきたし、時間かけてきたので。みなさんにとっても特別な日になってほしいなという気持ちでいっぱいです!」とTaka。「ここからどんどん、昔の曲とかも入れていきたいなと……」という言葉から、1stアルバム『ゼイタクビョウ』(2007)年から“欲望に満ちた青年団”、“カゲロウ”、4thアルバム『Nicheシンドローム』(2010年)から“Yes I am”……とライブでは久々となるナンバーを立て続けに披露していく。
「やっぱりね、ONE OK ROCKって最初の方はね、がっつり歌謡曲なんですよ。すごくJ-POPで。こうやってストリングスを入れてみると、気づかされるんですね。『ああ、日本の曲を聴いて育ったんだな』って」……今回のプロジェクトを通して自分たちの音楽の流れと向き合った実感を、Takaはそんなふうに語っていた。
「初期の曲は、オーケストラのアレンジがバッチリだったなあって。でも、難しいのが後半――海外でレコーディングしたり、海外の人たちと仕事したりしてから作った曲は、メロディの数も少ないし。音楽的にも、ミュージシャン的にも、すごく勉強になる経験をした日々でした」
音楽用語もわからず、楽譜も読めないので伝えたい音も伝えられないなど、オーケストラとの共演はコミュニケーション面でも苦労があったと明かし、「やっと緊張が解けてきて、楽しんでるんですよ」と話すTaka。「Toruは昨日、マジでMCの声ちっちゃくて」とToruをいじったところへ、すかさず「発声がピアニッシモやったな」と用語ネタで続くTomoya。会場がどっと沸き返る。
ライブバージョン/海外バージョン/さらに今回のオーケストラバージョン、と度重なるアレンジを経てひときわポップな訴求力を増した“One Way Ticket”がオーディエンスの爽快な歌声とともに響き、シンフォニックなスケール感とともに繰り広げられた“Pierce”でなおも会場を高揚の果てへと導いてみせる。
Toru・Ryota・Tomoya+オーケストラのインストセッションに続いては、今回のツアーが初披露となる新曲。アコギのストロークと4つ打ちのリズムが、凛とした音の次元を切り開いていくような、ONE OK ROCKの新章を予感させる1曲が、観る者すべての体も心も震わせていった。
ストリングスの調べとホーンセクションのファンファーレが伸びやかに広がった“I was King”。ToruとRyotaがステージの袖へと展開し、格段にドラマチックな音像を全身で体現してみせた“The Beginning”。パワフルなリフとツーバスが流麗なオーケストレーションと渾然一体となって、アリーナ&客席一面のヘドバンを呼び起こしていた“Mighty Long Fall”。すべてが決定的瞬間と呼ぶべきアクトが終盤へ到達するまで、体感時間ではあっという間だった。
「バンドとしてあと何個、夢を叶えられるかな?っていうことを考えますけれども……2019年、また気持ちを新たに、さらにパワーアップしたONE OK ROCKを、僕らの一番大事なファンに見せられるように、頑張っていきたいと思います」とTakaが「これから」への決意を語る。
「口ではどうとでも言えるしさ。ライブだって、組んじゃえばやるだけだし。アルバムだって、曲を作っちゃえば出すだけだし。どうやってその気持ちを、みなさんに見せていこうかな?と思ってます。30歳になって、ここからもっとさらにエンジンをかけ直して、がっつり気持ちを新たに一生懸命、死ぬ気でやる以外に、それをみなさんにお見せする方法はないと思っているので」
そんなふうに決然と語った後、「僕たちは、みなさんと同じように闘って生きていきます」と本編ラストに演奏したのは“Fight the night”だった。雄大なサウンドスケープが、終わりなきONE OK ROCKの冒険の旅路を照らし出すように力強く広がっていった。
アンコールの“We are”で割れんばかりの大合唱を巻き起こしたところで、「次にやる曲は……もうそろそろ、ONE OK ROCKは演奏するのが飽きてきた曲です。ですけれども、オーケストラのみなさんが加わることによって、またさらに進化した状態の曲を今からお届けできると思います!」というTakaのコールとともに、この日のフィナーレを飾る“完全感覚Dreamer”へ! たまアリ激震の狂騒と歓喜が、バンドアンサンブル&オーケストラが生み出す極彩色のサウンドと真っ向から響き合って、銀テープのキャノン砲以上に眩い光景を描き出してみせた。
今回のツアーをもって、日本での2018年のライブ活動を締め括ったONE OK ROCK。「また来年、日本でみなさんたちとお会いできる機会を、僕らは必ず設けますので」と来るべき2019年の再会を約していたTakaの言葉が、熱演の余韻とともに深く胸に残った。(高橋智樹)
終演後ブログ