今週の一枚 チャットモンチー『共鳴』
2015.05.11 21:05
チャットモンチー
『共鳴』
2015年5月13日発売
圧倒的な瑞々しさと才能を兼ね備えたガールズスリーピースバンドとして登場し、あっという間にシーンの最前線に飛び出したチャットモンチー。世界中見回してもどこにもいないマジカルなスリーピースバンドは、ドラマー高橋久美子の脱退をきっかけに、というかその逆境を逆手に取り、大胆に楽器パートを変え、どこにもいないロックバンドとなった。前作アルバム『変身』は、武者震いが止まらないかのような空気の中、《満月に吠えろ 転がる石になれ/まだ見ぬその先へ/この歌をとめるな》と叫ぶ“満月に吠えろ”に象徴されるように、ある種つんのめった跳躍力からくるオルタナティヴサウンドが生まれていた。
恒岡 章&下村亮介との「男陣」、世武裕子&北野愛子との「乙女団」、絵莉子と晃子によるツーピース、恒岡とのスリーピースと、様々な形態で制作された2年半ぶりのニューアルバムは『共鳴』。作詞で、絵莉子が敬愛する小説家・西加奈子が参加するなど、ふたりのチャットモンチーは、『変身』を経て、たくさんの共鳴者たちと自由に新しいサウンドを作り上げている。
冒頭を飾るのは、男陣との“きみがその気なら”。とてもカラフルでハッピーで猛々しい。シングル曲“こころとあたま”の、《こころと、あたまよ/ずっと寄り添っていて/二つで、一つでいて/離れていたらかなりしんどいのよ/どっちも正解にしてあげるよ》という、「からだ」と「こころ」を相違なく合体させようという切実なメッセージ。絵莉子の絶妙なラップが全編で聴けるラジカルな“ぜんぶカン”。乙女団で制作、晃子作詞による、女ならではの毒と自己顕示欲が渦巻く2曲、“隣の女”と“毒の花”の切れ味は鋭い。
新たな体制で制作されたことによる、開放的で遊び心あるサウンドプロダクション。共鳴者たちを得た環境からか、3人もしくはふたりで戦ってきたチャットモンチーに、かつてない連帯感ある闘争心が生まれている。そして、絵莉子が出産を経て何よりも守るべきものを得たからか、歌詞がずば抜けてシリアスで現実的だ。あらゆる情報が氾濫し、決して「みんな」に優しい街ではない東京。「うそ」と「ほんと」を見極め、強い心でもってサバイヴしようとするチャットモンチー。《ぼくらは空も飛べるけど エンジンをかけた/「まっすぐに突き抜けたい/この先が果てしなくても 目を閉じないでいよう」》(“ドライブ”)。新たに手にした、どこにもないこのオルタナティヴサウンドでもって、「今、ここ」で目を見開き闘うんだ、というリアルな闘争心が通底するアルバム。チャットモンチーの底なしのタフさに昂ぶる。(小松香里)