今週の一枚 WANIMA『Everybody!!』

今週の一枚 WANIMA『Everybody!!』 - 『Everybody!!』『Everybody!!』


ワーナー/unBORDEとタッグを組んでから初のアルバムということで、テレビCMやドラマ主題歌に起用されお茶の間レベルで人気を博してきた楽曲の数々が詰め込まれている。1年以上前に「JUICE UP!! TOUR」ファイナル(さいたまスーパーアリーナ公演)トレーラーで公開された“JUICE UP!!のテーマ”は、今回が待望の作品化であるにも関わらずとっくの昔にライブSEで大合唱を巻き起こすナンバーになっているし、NHK特番『WANIMA 18祭 -1000人のシグナル-』のために制作された“シグナル”もすでにアンセム化していると言っていいだろう。

よく考えたら、2017年にフィジカルリリースされた音源作品はシングル『Gotta Go!!』だけなのだが、WANIMAの楽曲群は次々に世間に浸透し生活者たちの心を支えてきた。これは凄いことだ。タイアップ諸々は多くの耳に触れるためのきっかけにしか過ぎず、むしろ楽曲の力そのものによってリスナーの魂の一部となってしまう。戦略性は高いが、実はWANIMAの人気は原始的と言ってもいいぐらい音楽のエネルギーそのものに支えられているのだ。新作『Everybody!!』 (読み:エビバデ)は、音楽ビジネスの新しいモデルを証明する1枚としても、成果を上げることは間違いないだろう。


本作は、聴くたびに胸にヒットする曲が違う。ワンチャン狙いのリビドー剥き出しな“CHEEKY”や“サブマリン”は、濃厚な情熱の色彩を伝えるようにレゲエ/ラテングルーヴが一層豊かになり、入り組んだ心情をすべて掬い上げて社会の大海原に乗り出す“ANCHOR”も、アルバムならではの静謐な曲調で永遠に胸の内で生き続ける命の存在感に触れる“SNOW”も、すべてが等価にエモーショナルで、リアルな肉体性を備えている。

デビュー時からグッドメロディ(とそれを具現化するKENTA(Vo・B)の歌唱力)で高い評価を得てきたWANIMAだが、悲しみの中からもう一歩を踏み出すように展開するメロディ、あるいは、喜びに満足することなく更にもう一歩を踏み込むメロディ展開が、彼らの「グッドメロディ」の本当の凄さである。ライブの場やテレビ出演時に、KENTAは「曲を作るときは、ゆったりとしたテンポのセッションで始めることが多い」という意味のことを語ってきたが、すべての楽曲において「もう一歩」のためのメロディが練り上げられている。ファストで爆発力に満ちているのに、WANIMAの楽曲がいつも深い余韻を残してゆくのは、そのためだ。とりわけ、最終ナンバーのタイトル曲に触れればはっきりと分かる。

このアルバムは、2018年を迎え新生活を目指す、まちまちな境遇のまちまちな人々をすべて乗せてゆくだろう。だから、聴くたびに胸にヒットする曲が違っているのだ。際限なく増え続ける無数の一人一人とまっすぐに向き合っているから、『Everybody!!』というタイトルになったのだ。誰ひとり置き去りにしないWANIMAの本性が、成長の過程で剥き出しになったマスターピースである。(小池宏和)
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